万博会場と比較される関西空港は海上空港のため、地盤沈下が最大の課題とされた。このときは一定の間隔で地面に垂直に砂の杭を打ち込むサンドドレーン工法で地盤を強化し、安定させていった。

 しかし、夢洲はこのような特殊な工事はされていない。

 大阪府と大阪市が国にIRの区域整備計画を申請し、現在、国の有識者委員会が審査をしている。昨年中にははっきりすると思われた認定の可否がまだ出ていない。理由の一つが地盤沈下問題だという。この点について、大阪市の松井一郎市長はこう話す。

「課題は地盤の部分だけととらえている。地盤については根拠ある数字をしっかり出していきたい。夢洲の埋め立ての地盤について、土壌汚染だとか地盤がどうしても液状化するだとか指摘されている。その問題点解決について、対応策を求められているのできちっと説明する」

 だが、問題はそう簡単ではなさそうだ。大阪市港湾局の

<土地造成事業(大阪港埋立事業)実施状況説明資料>

 などによると、淀川には年々、砂や泥が堆積しており、船の運航に支障をきたすため大阪市が除去している。その土砂に加えて、廃棄物や建設残土などが夢洲の埋め立てに使われているのだ。現在は「大阪湾フェニックス計画」と呼ばれ、近畿2府4県から廃棄物などを受け入れている。

「淀川など大阪市内の不要な土砂を市外に持ち出すと費用が高額になる。そこで人工島の埋め立てに使い、コストを削減している。空港建設が前提でコストをかけている関西空港とは違い、夢洲は不要な土砂、廃棄物などの処分のために人工島をつくり、その後で利用方法を考えるということ。事業認可は1970年代におりている。万博の開催、IR誘致が決まっていれば違った工法をとったでしょうが、当時は廃棄物や残土処理が最優先課題だったはずなので……」(大阪市幹部)

 大阪・関西万博は半年、カジノは恒久的な施設なので、地盤沈下の影響はカジノの方が大きいと言えそうだが、実は万博も、別の理由で『ヤバイ』状態になっている。

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工事に取りかかれない事態に