目玉となるのが、世界から出展されるパビリオン。なかでも、万博のテーマとなっている「いのちの輝きプロジェクト」。

 映画監督の河瀬直美氏、メディアアーティストの落合陽一氏ら8人が手掛ける計画だ。しかし、万博の中心となるテーマ館のパビリオン建設の入札が不調となり、工事にとりかかれない事態になっている。

 また「大催事場」「迎賓館」も落札はなく、日本国際博覧会協会のホームページには、昨年に一般競争入札となった工事10件が不調と書かれている。

 すでに万博関連工事を受注している大手ゼネコンの幹部は不調の理由を「2025年に万博開催ですよね。もう2年しかないわけです。それに万博のパビリオンというのはわかりやすく言うと、世界に一つしかなく、なおかつ高いクオリティーのものを建設しなければならない。ある程度の規格が決まっているマンションやビルなどと違い、複雑です。万博のホームページに、河瀬さんや落合さんらのパビリオンのイメージが掲載されていますが、あれを見るだけで二の足を踏みます。もちろん費用は高くなります。おまけに、ウクライナ情勢や世界的なコロナ禍で資材の高騰が続いている。日本国際博覧会協会から出ている値段ではまったく利益がとれません」

 と説明し、こうも話した。

「業種はまったく違いますが、東京オリンピック・パラリンピックで汚職事件がありました。広告会社が仕切ってまとめる。昔ならわれわれの業界も大手ゼネコンがまとめて“調整”なんてことはありました。けど、あの事件を見ると、そんなことはできません。それに万博の会場建設費の上限は決まっていますからね」

 と業界の裏事情を打ち明ける。

 万博の会場建設費は1850億円。国、大阪府・市、経済界が3分の1ずつ拠出することになっている。

 松井市長は、

「もともと厳しめに見積もって入札をかけていた。1850億円の上限を維持するために必死でコストをおさえる努力をしている。それがあるから不調なのかもしれない。高い品質のものを安く、1850億円の総予算におさまるように、お互いが知恵を振り絞ってやっている」

 と説明する。

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「国からも認定が降りていない。綱渡りのようだ」