鑑定留置のため奈良西署を出る山上徹也容疑者=2022年7月25日
鑑定留置のため奈良西署を出る山上徹也容疑者=2022年7月25日

 2022年最大の衝撃的ニュースだった安倍晋三元首相の銃撃事件。殺人容疑で送検され、鑑定留置中の山上徹也容疑者(42)について、奈良地検が殺人罪などで起訴する方針を固めたことがわかった。鑑定留置に時間がかかったが、山上容疑者が起訴された後も、公判開始までは長期化が予想されている。山上容疑者が犯行の動機に、宗教法人「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)への恨みをあげたことの影響がありそうだ。

 参議院選挙中の7月8日に事件は発生した。犯行現場で逮捕された山上容疑者は7月25日に大阪拘置所に移送され、事件当時の精神状況を調べる鑑定留置が始まった。当初は11月29日までの予定だったが、奈良地検が延長を求めて継続していた。留置期限が2023年1月10日に迫る中、奈良地検は留置終了のタイミングで山上容疑者の身柄を奈良県警に戻し、起訴する方針だ。

 鑑定留置中の山上容疑者は、月に数回程度、精神鑑定のために専門医と面談している。

 鑑定はどのように進むのか。著名な少年事件などで鑑定経験がある専門医は、

「まず雑談をして、生い立ちなどを聞いていきます。その後、ある程度、話ができるようになると、様々な手法を使って、どういう精神状態なのかを鑑定していきます。それと並行して脳波などで病患があるかチェックもします。通常は2、3か月程度ですが、山上容疑者の場合、かなり長い印象です」

 と話す。

 奈良地検は鑑定の状態から、山上容疑者の刑事責任能力が問えると判断し、起訴の方針を固めたようだ。もっとも捜査関係者によると、

「山上容疑者は逮捕直後から、理路整然と取り調べに応じていた」

 という。

 山上容疑者は、犯行の動機について一貫して、

「母親が旧統一教会にのめりこみ、多額の寄付をしたため家庭が崩壊した」

「旧統一教会の韓鶴子総裁を狙ったが、ダメだった。教会と親しい関係にあった安倍元首相が奈良に演説に来るとスマートフォンで情報を知り、銃撃した」

 などと供述していたという。捜査関係者が続ける。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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『やったから仕方がない』と冷静な感想を供述