2021年発表の「EF EPI(EF英語能力指数)」によると、日本の英語力は世界112カ国・地域中78位。なぜ私たちは英語ができないのか、どうすればできるようになるのか。グローバル社会で欠かせないとされる英語だが、多様化がさらに進む世界は、本当に英語だけで渡っていけるのか――。日本の自動翻訳研究の第一人者である隅田英一郎氏が、自身の英語学習も振り返りながら考察。『AI翻訳革命』(朝日新聞出版)から一部抜粋して紹介する。
* * *
「英語ができない」は必然
「日本語話者が英語を習得する際の困難の度合い」を必要な学習時間で推定しよう。米国務省の外務職員局(Foreign Service Institute、FSI)が、逆方向、つまり、英語話者が日本語を習得するのに必要な学習時間を公表しているので、これを参考にする。FSIによれば英語話者が仕事で使える(※注1)レベルまで外国語を習得するために要する時間は図1のグラフの通りである。
米国人と日本人の基礎的な能力に差はないだろうし、元の問いである日本人が英語をマスターする時間は2200時間と想定しよう(※注2)。一方で、日本の中学校・高校での英語授業は総計約1000時間と約45%ほどで、5割に到達していない。必要な勉強時間を費やさず途中でやめているので、「英語ができない」は必然である(※注3)。何らかの動機を持つものは、在学中あるいは卒業後、語学学校などを駆使して、2200時間に到達するまで、勉学の追加に励む。1200(=2200-1000)時間は土日込みで毎日1時間頑張って3年4カ月弱という膨大な時間だ。こんなに大変なことを多数の日本人がしているのはおかしくないだろうか? 英語は自動翻訳で済ますことに決めると気が楽になる。英語学習にかかるはずの1200時間を自由に使うことができる。この時間をあなたなら何に投資するか?