ただ、病名が分かったところで、依存症の体質は変わらなかった。
執行猶予付きの判決を受けた湯浅さんは、自宅に戻るとすぐに向精神薬に手を出した。そしてわずか2週間後、万引きで逮捕され今度は懲役2年7月の実刑判決を受けた。
■母親からの虐待とネグレクト
湯浅さんは自らの半生を「好き放題に生きてきた」「クソみたいな生活だった」と振り返る。その言葉通りに破天荒だが、ただどこか、あえて自分で自分を痛めつけるような生き方を選んできたようにも見える。
幼少期に味わったのは、母親からの虐待とネグレクト(育児放棄)。
「幼いころから、どこか精神的にゆがみがあったのかもしれません」
ギャルだった高校時代。街でナンパをしてきた「超エリート」の大人に持ちかけられて、援助交際に走った。
繁華街にいた外国人から「痩せる薬だよ」と声をかけられて違法薬物にも手を出した。
身長168センチで体重は40キロそこそこ。明らかに痩せる必要はなかったが、理由はどうでもよかった。
高校卒業後に夜の世界で働き始めると、店のナンバーワンに昇りつめた。仕事は頑張っていた一方で、昼夜逆転の生活が続き、精神科で向精神薬の処方を受けるように。違法薬物もやめられず、体はさらに痩せていった。
気がつけば、多幸感を得たり精神的な苦痛から逃れるために薬を大量服用する「オーバードーズ(OD)」を繰り返すようになっていた。客の誘いで「闇カジノ」に行くうちに、ギャンブルもやめられなくなった。
26歳。愛想をつかされたのか、恋人に振られて薬を大量服用し自殺未遂した。
破天荒に生きてきたツケはどんどん回ってきた。三十路(みそじ)手前になると、夜の店には自分より若い女の子が入ってきて人気は下降した。薬の影響で言動が支離滅裂になり、ついていた客もどんどん離れていった。
31歳で、安定した職業の高収入の男性と結婚した。だが、甘いはずの新婚生活に感じたのは、
「なんでこんなに退屈なのか」
今度はスリルを求めて、毎日のように万引きを繰り返すようになった。