「相手にテイクダウンに入らせないで、ディフェンスできたら僕が勝つと思うし、逆にテイクダウンされて動けなかったら相手の勝ちだと思います。本当に1Rで、相手が僕をテイクダウンできなかったら終わりなんじゃないですか。テイクダウンできなくて僕の打撃を5Rもらってたら絶対もたないと思うので」

 どちらが強いか、あるいは“勝てる”という直感は、序盤のちょっとした交錯でマンガやアニメのように感じ取れるのだと云う。

「ゴングが鳴って、距離感とか最初の時点で“俺今日行ける”とか“こいつ強ぇな”とかっていうのは分かると思います。だから、蓋を開けてみれば“俺今日調子いいし全然大したことないや”って、ワンサイドになる可能性もあると思います」

 だが自信が過ぎて過信になると「何かあった時に崩れちゃうので、ニュートラル」に精神状態は置いており、モラエスも「生半可な相手じゃない」と目し、自身の「集大成」と若松は位置づける。落ち着いた心持ちで試合に臨み、あとはゴングが鳴って対峙した時モラエスに何を感じるかだ。

「本当に単純に強さだけを求めていて、何かパフォーマンスをしたりトラッシュトークをするのではなく、僕のファイトを見ればどういう人間か分かると思います。とりあえず勝つことしか考えていないです。“純粋なファイターはここにいるんだぞ”っていうのは知らしめたいです」

 勝ちたい、強くなりたい――それに直結すること以外は削ぎ落として若松は生きている。

「人気がどうとか、格闘技を広めたいとか思ったこともありましたけど、今は本当に純粋に初心にかえって、そういうのは考えないで、単純に強さだけを求めていきたいです。とりあえず相手との戦いなので、それに集中しています」

 相手と戦って勝つ、それ以外のことに今は気を取られなくなった。

「昔はトラッシュトークをして、自信を持って強くっていうのをいいとも思ったけど、やっぱり日本人は謙虚で物静かだけど“やる時はやる”っていう侍の精神っていうか、それが今の僕の美学です。他の選手で“口だけだなコイツ”っていう奴は見てて恥ずかしくなるし、自分は絶対そうなりたくない。そんなになって格闘技をやってる意味はないって思うし、戦いだけで見せていきたいです」

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若松が語る「日本人選手の強さ」