大阪府の吉村洋文知事
大阪府の吉村洋文知事

 岸田文雄首相は全国の18都道府県に発出されているまん延防止等重点措置を3月21日で全面解除する方針を発表した。大半の都道府県が解除となっていた中、最後まで解除の判断が難航したのが大阪府だった。

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 吉村洋文知事は記者会見で「(新規感染者数が)減っていることは間違いないが、再び増えることも考えられる」としていた。

 大阪府は16日、新型コロナウイルス対策本部会議を開催。専門家らの意見を聞いて、吉村知事は解除の方針を決めた。だが、当日大阪府から配布された専門家の意見表明の資料を見ると、かなり厳しいものもある。

<3月15日現在、重症病床 54%、軽症・中 等症病床 63%と依然として高く、病床のひっ迫状態から脱却したとは言い難い。(中略)4 月上旬までは、マンボウを延長するか、仮にマンボウ解除するにしても、飲食店に関しては、酒類提供の時間制限などの制約は残した方が良いのでないか>

<死亡分析において 7 日以内の死亡割合が多いことは、特に高齢者においてワクチン3回目追加接種が未だ十分に進んでおらず、特に高齢者施設において初期治療が適切に行われていない患者さんが死亡の転帰になっている>

<次なる第7波に向けて直ちに備えないとすぐにまん延防止等重点措置を再度要請する事態になりかねない。その点を十分に理解し、今回解除とするかどうかを慎重にご判断いただきたい>

 このようにまん延防止等重点措置を解除しても大丈夫なのかと、首をかしげるような内容の意見が多々、見られた。専門家会議の委員でもある大阪府医師会の茂松茂人会長がAERAdotの取材にこう話す。

「大阪府では対策本部会議はよく開かれます。しかし、専門家が集う、専門家会議や感染症対策協議会はあまり開かれません。専門家会議を開催し、もっと現場の意見を聞いてほしいと要望はしているが実際にはペーパーで意見を出すだけ。一方で『これやってください』というリクエストはよくきます。対策本部会議だと少数の専門家が参加するのみ。大阪府のコロナ対策がうまくいっていないのは、そういう背景も考えられる」

 専門家会議の開催状況を確認すると、これまで開催されたのは4回。昨年と今年は1回も開かれていないという。一方、対策本部会議は、月におおむね2回から4回のペースで開催され、3月18日までに73回を数える。16日の対策本部会議で意見表明した茂松会長はまん延防止等重点措置(解除)はやむを得ない側面もあるとしつつ、こう指摘している。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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