
その後、2020年にベラルーシで大規模な民主派弾圧が発生し、ルカシェンコ独裁政権は完全にロシアの勢力圏に入った。そんな状況で2021年春、プーチン大統領は突如、大軍をウクライナ国境に派遣した。ウクライナへの野望の牙を剥いたのだ。
◆プーチン論文に記された野望とは?
もっとも、当時はロシアとウクライナの対立はウクライナ東部・ドンバス地方の問題が中心だった。前述した親ロシア派とウクライナ軍の停戦交渉をめぐる争いである。この問題でのロシアの建前は“ウクライナ政府に弾圧されているロシア系住民の同胞を守る”という論理だった。
しかし、プーチン大統領は同年7月、長い論文を発表してこう書いた。
「ロシア人とウクライナ人はひとつの国民。ウクライナの主権保持はロシアとの協力が不可欠であり、域外の国は介入するな」
これは事実上、ウクライナはロシアの“縄張り“だと宣言したようなものだった。そして同年秋、さらに大軍を派遣すると、同年12月に要求内容をいっきに拡大したのだ。
「NATO不拡大を確約せよ。中欧、東欧、バルト三国からNATO軍と軍事施設は引き揚げよ。欧米が敵対的な路線を続ければ軍事的対抗措置をとる」
ウクライナ東部の問題から、いっきに対NATOに変わったのだ。そして、その後は「侵攻はしない」と言いつつロシア軍の増強を続けた。
事態がいっきに動いたのは2月21日だ。その日、プーチン大統領はウクライナ東部の親ロシア派支配地域の2つの自称国家の独立を承認し(ロシア下院が同月15日に承認要請を決議していた)、同地域での治安維持活動を軍に命じたのだ。それにより、ロシア軍のウクライナ東部への公式の侵攻が開始された。
その日、プーチンは長い演説で以下のような内容を語っている。
「ウクライナはロシアによって創造されたにすぎない。独立した国として存在すべきではない」
「ウクライナはNATOの傀儡。NATOから武器を提供されたウクライナは、ロシアにとって軍事的脅威だ。ウクライナはロシアに対する軍事攻撃を計画し、核兵器を入手しようとしている」