国会で答弁する岸田文雄首相(2022年1月)
国会で答弁する岸田文雄首相(2022年1月)

「参院選を控えているので、圧勝したいが厳しい。ここで落とせば、波に乗れず、岸田政権にも影響大だ」

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 自民党幹部は1月23日に投開票が行われる沖縄県名護市長選挙の情勢調査の数字を前に苦い表情だ。

 自民党と公明党の政権与党が推すのは現職で2期目を目指す、渡具知武豊(とぐち・たけとよ)氏。立憲民主党、共産党、れいわ新選組が推薦するのは前名護市議、岸本洋平氏で、一騎打ちとなっている。

 自民党の政務調査役を20年以上務めた、政治評論家の田村重信氏は、名護市長選は自民党にとって「国政選挙と同等のといっても過言ではない」という。

 名護市には4つの米軍基地があり、市の面積の10%を占める。そして、普天間飛行場を名護市辺野古に移設する工事などもあり、基地問題という国策が背景にある。それゆえ自民党、メディア情勢調査なども国政選挙並みの態勢だ。

「1月中旬に行われたメディアの情勢調査では与党が推す渡具知氏と野党が推す岸本氏はほぼ横一線。大激戦が展開されている。自民党調査では昨年11月時点では渡具知氏がやや優勢だったが、12月には岸本氏が逆転し、今は横一線となっている」(前出・自民党幹部)

 一番の争点は米軍基地問題だ。辺野古移設に加えて、新型コロナウイルス、オミクロン株の感染拡大が米軍兵士の影響が大きいとみられより関心が高い。

 しかし、岸田文雄首相は名護市長選挙については「聞く力」のみで沈黙を守り続けているという。

「基地からのオミクロン染み出し問題もあり、自公にとっては難しい選挙ですが、岸田首相は例によって下手に関わって傷を負いたくないので、情勢報告を『聞く』だけです。米側に厳しく対応を迫るでもなく、選挙を後押しもせず、無関心を装っています。オール沖縄の底力は強いですし、基地コロナ問題に適切な対策が未だに打てていないので、大きなマイナスになっている。岸田首相は傷やダメージを負わないようにふるまう危機回避能力は非常に高いと思います」(官邸関係者)

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コロナ、米軍基地の移転問題が争点