ニュージーランド国防省が撮影したトンガ
ニュージーランド国防省が撮影したトンガ

 15日、トンガの海底火山「フンガトンガ・フンガハーパイ」が大規模な噴火を起こした。現地との通信状態が悪く、被害の実態がわかっていない現状が続いているが、火山島が消し飛び、広範囲に火山灰が降っている様子など少しずつわかってきている。専門家からは「あらゆるライフラインが寸断されている恐れがある」と警鐘を鳴らす。いったいどのような事態が起こっていると考えられるのか。

【写真】島が消えた…噴火で海没した火山島のビフォー・アフター

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「巨大噴火を起こした可能性がある」

 こういうのは神戸大の巽好幸名誉教授(マグマ学)だ。巨大噴火とは、噴火の規模を表す「噴火マグニチュード」(噴火M)で6クラスの噴火で、マグマ噴出量は4立方キロメートルにも及ぶ規模だ。今回の噴火が実際にどの程度であったかは今後の詳細な調査が必要だが、巽氏は「噴煙の高さは20キロ。ピナツボ噴火と同等か、それ以上の大きな噴火だったかもしれない」と見る。

 ピナツボ噴火は、1991年にフィリピンで起こった巨大噴火だ。噴火Mは5.8だと言われている。これは1707年に富士山が大規模に噴火し、江戸などにも大きな被害をもたらした宝永噴火(噴火M5.26)以上の噴火だ。

 この規模になると噴火の影響は凄まじい。国連衛星センターが公開した衛星写真を見ると、285ヘクタールもあった火山島がなくなり、海になってしまっている。その他の写真を見ると、津波に襲われたあとがあるほか、全体的に灰がかっており、広範囲に火山灰が降り積もっていることが伺える。

国連衛星センターが公開した衛生写真。285ヘクタールほどあった火山島の陸地のほとんどが海没してしまった
国連衛星センターが公開した衛生写真。285ヘクタールほどあった火山島の陸地のほとんどが海没してしまった

■山体崩壊で海底ケーブルを切断か

 約170の島で構成されるトンガでは、噴火の影響で国際電話やインターネットなどで使う海底ケーブルが切断され、さらに停電もしており、通信ができない状態が続いている。被害の詳細はわからないが、巽氏はこう指摘する。

「噴火によって海底火山が山体崩壊を起こして、海底ケーブルを切断した可能性はあります。あれほどの噴煙が上がると、周辺では大量の火山灰が積もっており、火砕流も起こったと見ています。トンガの首都ヌクアロファは南方に約65キロ離れていますが、火山灰が少なくとも数センチは積もっている恐れがある。生活に大きな障害を引き起こしていると見ています」

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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降り注ぐ火山灰の怖さ…