トンガのノムカ島上空。屋根などに火山灰が積もっている様子が確認できるという。ニュージーランド国防省撮影
トンガのノムカ島上空。屋根などに火山灰が積もっている様子が確認できるという。ニュージーランド国防省撮影

 火山灰は普通の灰とは違い、ガラス片だ。大きいもので砂粒程度の大きさ、小さいものでは小麦粉のように小さいといわれる。たとえば、電柱の送電機器「がいし」に火山灰が積もると、漏電し、停電を引き起こす。また、車のエンジンなどに入り込むとフィルターを詰まらせて使えなくなり、電子機器もショートするなど様々な影響を及ぼす。

 こうした事態がトンガでも起こっていると見られる。さらに巽氏は、こう懸念を語る。

「トンガでは雨水をためて飲料水にしているようですが、火山灰で汚染されれば、飲めなくなります。また、数センチ積もれば、火山灰を撤去しない限り、車も走れなくなる。あらゆるライフラインが寸断されているのではないか」

ニュージーランド国防軍
ニュージーランド国防軍

■火山灰で空港や船舶に甚大な影響

 今後、火山灰による被害が拡大する恐れもある。その一つは家屋への被害だ。

火山灰は1センチ積もっただけで、1平方メートルの重さは10キロになる。10センチも積もれば、重さは100キロ。そこに雨が降ると、重さは2倍程度になる。さらには、健康や農作物への被害も今後出てくると思われる。

 一刻も早い救援が必要な状況だが、見通しは厳しい。海底ケーブルの復旧には1週間以上かかると言われ、さらにトンガの空港が火山灰によって使えなくなってしまっているという。火山灰がたくさん飛んでいると飛行機のエンジンも故障させる。船舶も軽石をエンジンが巻き込み、使えなくなるともいわれる。19日は空港が使えるようになると報道されているが、その後、どこまで救援が進むかは未知数だ。

「現在のところ噴火は止まっており、火山灰は収まっている。積もった火山灰によって難しい状況はあるが、一刻も早い救援が望まれている。日本でも巨大な噴火を起こすリスクはある。他人事として捉えるべきではないと考えています」(巽氏)

(AERAdot.編集部・吉崎洋夫)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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