ドラマが終わって、結果、付き合っていましたとなっても、「やっぱりな」と思うし、そりゃそうだとも思うし、自分が好きな恋愛ドラマだったら、安心するかもしれない。逆に、めちゃくちゃいい恋愛ドラマだったけど、男性も女性も、「完全に役を演じました」といい切って、恋愛感情をちっとも演じてなかったら、それこそ怖い。役者としてはすごいんだけど、怖すぎます。

 今回の「逃げ恥」を経て、ドラマが大ヒットして、今年特番までやって、そして結婚。人間らしいなと思って安心するし、心からめでたいと思う。

 数年前、僕が作・演出の舞台で、主演の二人が舞台を経て、結婚したことがあった。物語の中で、恋愛シーンがあるのだが、最初はそこを演じることをめちゃくちゃ照れていた。

 女優さんに相手を「後ろから抱きしめてほしい」と言ったけど、なかなか思い切り抱きしめられなくて、女優さんも照れちゃって。他の俳優さんが「こうやってやるんだよー」と主演の俳優を激しく抱きしめてお手本を見せてくれたりして。

 回を重ねていくうちに段々いいシーンになって来た。そして最終的にはキュンとするシーンになった。毎日稽古で同じことをするのである。みんなが見てる前で、毎日、抱きしめて、お互いを見つめあって、甘い言葉を言いあって。そして舞台が終わって結婚した。

 驚きはしたけど、「そりゃそうだよな」と思うし、作品を超えて愛が生まれることが、めでたいことだと本当に思う。

 ちなみに、抱きつくお手本を見せた俳優さんは「ちくしょー」と言いながら「俺のおかげだー」と叫んでいた。恋。

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中。バブル期入社の50代の部長の悲哀を描く16コマ漫画「ティラノ部長」の原作を担当し、毎週金曜に自身のインスタグラムで公開中。YOASOBI「ハルカ」の原作「月王子」を書籍化したイラスト小説「ハルカと月の王子様」が好評発売中

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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