東京五輪・パラリンピックに向けた5者協議に4月28日、出席した橋本聖子会長(C)朝日新聞社
東京五輪・パラリンピックに向けた5者協議に4月28日、出席した橋本聖子会長(C)朝日新聞社

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長が4月26日の会見で、大会期間中の医療人員として看護師500人の確保を日本看護協会に依頼したことを認めた。この発言に医療関係者、世論の怒りが収まらない。

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 新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言が東京、大阪、京都、兵庫で発令され、医療体制が逼迫している地域もある。都内の病院に勤務する医療関係者はこう語気を強めた。

「関西圏で急拡大する変異ウイルスが首都圏でも感染拡大して収束の見通しが立っていません。個人的にはロックダウンした方が良い。それぐらい危機的な状況だと思います。そんな中で東京五輪の期間中に看護師500人を確保したいって…。看護師はどこの病院も不足していてやりくりが大変なんです。組織委員会の人達は少ない人員で働いている医療現場を一度見に来て欲しい」

 武藤事務総長の発言が医療関係者の反発を呼び、28日には愛知県医労連がツイッターデモを行い、多くの人が拡散。「#看護師の五輪派遣は困ります」がトレンド入りを果たした。

 SNSやネット上でも批判コメントが相次いだ。

「今でさえ通常の仕事やコロナ対応で追われているのに、仕事場を移しコロナ対応に当たる余力などほぼ皆無でしょう。感染力の強い英型やインド型の二重変異株ウイルスの感染の危険に晒されるし、既に心身共に限界でしょう。余計な仕事を増やすJOCや政府や都は負担も考えず、信じられない」

「これ、看護師の大量退職を招かないかな…? 看護協会が要請に応じてしまった場合の仮定になるが、五輪担当で送り込まれる看護師が出ることになる。恐らく、何らかの批判が看護師当人に向けられることは予見できる。それを避けたい看護師は、退職の道を選ぶことがあっても不思議ではない」

 そして怒りの矛先は東京五輪に内定が決まったアスリートにも向けられ、「アスリートの皆さん、医療従事者の過酷な仕事ぶりを見ても、五輪に出たいと言えますか?」などの意見まで飛び出している。

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五輪開催への怒りの矛先がアスリートまで