シドニー五輪に出場したある選手は、アスリートたちの心情を慮る。

「東京五輪、パラリンピックの開催に向けて賛否両論あると思いますが、一番肩身が狭い思いをしているのは選手たちです。五輪は他の国際試合とは違う特別な舞台なんです。今でもシドニー五輪に出場したことは人生の宝物だし、今回は地元の日本で五輪が開催されるのでまさに夢の舞台です。辛い練習を頑張れるのも、東京五輪で金メダルを取りたいという大きな目標があるから。選手たちの気持ちを考えると、東京五輪を開催してほしい。でも今のご時世は医療関係者が大変な思いをされているし、国民も不要不急の外出を控えて生活を送っている。五輪を開催してほしいと公の場では発言できません…。僕も正直肩身が狭いです」

 苦悩の表情を浮かべてこう選手を擁護した。

「五輪に出場が内定している選手たちは責めないで欲しい。選手たちに落ち度はありませんから」

 組織委員会の橋本聖子会長は28日、国際オリンピック委員会(IOC)などとの5者協議後に記者会見し、「ギリギリの判断として無観客という覚悟を持っている」と語った。東京五輪に向けて問題が山積する中、政府、組織委員会、自治体、国際オリンピック委員会の決断が注目される。

(牧忠則)