渡辺医師は、今回の経験と今までの蓄積に基づき、自身が代表理事を務める漢方産業化推進研究会のホームページに自分たちで作成したコロナに対するガイドラインを掲載した。中国、韓国、台湾のガイドラインを参考に作成したという。

「予防としては一般的に使える処方を載せました。基礎疾患のあるなしなど、いろいろなケースに対応できるようになっています。ここに載せたのはあくまでも漢方薬の選択肢の一部であり、実際には漢方に詳しい医師・薬剤師に相談し、証に応じた処方をしてもらってください」(同)

 基礎疾患のない人であれば、漢方に詳しい身近な薬局を見つけてアドバイスをもらうようにと渡辺医師は話す。

■内なる正気を高める。感染源を避ける

 また、軽症で済ませるためには、日常の健康管理も重要だ。漢方的にはこれを「養生」という。養生には二つの原則があると渡辺医師は話す。

「一つは『内なる正気を高めれば、外邪は寄りつかない』ということ。もう一つは『感染源を避ける』ということです。どちらもあたりまえのことですが、これを実践してはじめて予防薬が力を発揮するのです」

 また、コロナを「正しく恐れる」ことが大切だと渡辺医師は話す。

「『正しく恐れる』とは家にじっとしていることではありません。体力も免疫力も低下してしまいます。むしろ積極的に日光を浴びながら外歩きすることで血行もよくなり、ビタミンDが作られます。日々の自己の体力と免疫を維持、増進することが『正しく恐れる』ことです」

 週刊朝日ムック「未病から治す本格漢方2021」では、漢方産業化推進研究会のホームページに掲載されているコロナに対するガイドラインをもとに、感染症に用いることができる漢方薬一覧を掲載している。ぜひ参考にしてほしい。

(文/伊波達也)

※週刊朝日ムック「未病から治す本格漢方2021」より抜粋