■2年で約200テーマの理科実験を実践

 二瓶先生は言う。

「2014年度に実験を主体とした理科教育プログラムを導入しました。中1と中2の授業はすべて実験室で班ごとにおこなわれていて、第1分野・第2分野それぞれで100テーマにも及ぶ実験に取り組むのですよ」

 なぜ、同校では実験主体の授業にしているのだろうか。

 理科教諭の大谷順二先生は語る。

「いろいろな学校の教員たちと交流する中で、『実体験』に乏しい子たちが年々増えているのではないかという声がよくあがっていました。だから、ペーパー上で学ぶだけの理科に興味を持てない子が多いのだろうと。せっかくなら子どもたちも教員も理科を楽しみたい。それならば、思い切って実験ばかりの授業スタイルに切り替えてはどうかと提案したのです。そのためには人材や道具、そして、実験室などが必要不可欠ですが、学校側が惜しみなくその環境を整えてくれたのです」

 同じく理科教諭の平山瑛一先生は苦笑しながらこんなエピソードを話してくれた。

「わたしが顧問を務めている理科部の合宿で泊まり込んだとき、『食事を自分で用意する』という課題を与えたら、『器を忘れてしまった』という子がいました。そこでプラスチックの器を貸したら、それをそのままガスコンロの上に載せて、火にかけようとしていたんです (笑)。この手の『実体験に乏しい子』は年々増えているように感じます」

■女子校・東横学園からの大変身

 東京都市大学等々力の沿革について軽く触れておこう。

同校を経営する学校法人「五島育英会」の創設者は、東急電鉄創業者でもある五島慶太氏。同校は東急グループに属している。

同校の前身は「東横学園」という女子校。進学校化などの改革の遅れなどが理由で、2000年代に入ったころから生徒募集に苦戦し始め、1学年1クラスにせざるを得ないときもあったという。

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