五島氏の没後50年という節目を迎えた09年、五島育英会が運営する武蔵工業大学の名称を「東京都市大学」に変更。それに伴い、グループ内の幼稚園から高校すべてに「東京都市大学」の名が冠された。そして、この機に「東横学園」は「東京都市大学等々力」と名称変更するだけではなく、共学化に舵を切り、また、入試制度や中高一貫の教育内容においても抜本的な改革をおこなった。その結果、いまや人気校の一角に躍り出たのだ。
たとえば、大学合格実績に目を向けてみよう。10年度の東横学園時代、卒業生58人に対し、国公立大学には2人、早慶上理に1人、GMARCHに4人という現役合格者数だった。それが10年後の20年度の東京都市大学等々力は、卒業生172人に対し、国公立大学39人、早慶上理73人、GMARCH157人という現役合格者を出した。もちろん、大学合格実績は学校教育成果のほんの一端に過ぎない。それでも、同校の教育改革が一定の効果を上げていることの証しだろう。
なお、雑誌AERA(2020年8月31日号)の特集「171高校の『現役進学』力 旧帝・難関20大学に強い『真』の実力校ランキング」では、東京理科大学への現役進学率ランキング第1位が同校であった。これは同校の理科教育の充実と無縁のものでは決してないだろう。
■失敗するからこそ実験成功の醍醐味がある
話を戻そう。大谷先生と平山先生が口をそろえて言うのは、子どもたちは中学受験勉強を経て理科の基礎知識は身につけているが、それを「実体験」にすぐさま取り込むことは難しいということ。だからこそ、実験は「失敗続き」になるらしい。
「みんなペーパー上では実験器具の知識を身につけています。でも、実際に触ってみると操作に手こずる子たちばかりですよ。でも、大けがしなければ失敗はいくらしてもよいとわたしは思います」(平山先生)
大谷先生もこう言い添えた。
「物が壊れるくらいの失敗なら、わたしはあえて放っておきますよ。失敗して気づくこともありますし。痛い目を見たからこそ、実験が成功する喜びを味わえますよね」
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