かみじょう・ゆりな/1989年生まれ。介護福祉士・モデル。白梅学園大学非常勤講師。東京大学政策ビジョン研究センター研究協力者(撮影/写真部・小黒冴夏)
かみじょう・ゆりな/1989年生まれ。介護福祉士・モデル。白梅学園大学非常勤講師。東京大学政策ビジョン研究センター研究協力者(撮影/写真部・小黒冴夏)
(撮影/写真部・小黒冴夏)
(撮影/写真部・小黒冴夏)

 高齢化にともない、介護を求める高齢者とその家族は増えています。その一方で、供給側である介護職の高齢化も進み、訪問介護では平均年齢が55.5歳という調査もあります(全国労働組合総連合『介護労働実態調査 報告書』)。そのようななか、インスタグラムなどを利用して若い世代に向けて介護職の魅力を発信する介護福祉士の上条百里奈さん。

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 介護施設で働きつつ、モデル活動も行っています。伝えたいのは、意外にも「介護職を増やしたい」ということではないそうです。

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 私は介護福祉士として、小規模多機能型居宅介護事業所と特別養護老人ホームで合わせて週3日働きながら、週1日のペースでモデルの仕事もしています。また東京大学の政策ビジョン研究センターで、介護の労働環境、とくに労働者の健康について研究をしています。

 介護に触れたきっかけは中学時代の職場体験です。もともと医療関係の仕事に就きたいと思っていました。医療を希望しましたが、介護も医療と近い世界なので、施設での介護体験を選びました。

 介護の現場はとても居心地のいいものでした。介護を受けている高齢者の方は人を条件付きで判断せず、私がただ存在していることがうれしいのだと伝えてくれるからです。ただそばにいるだけで「偉いね」「疲れたでしょ、お茶飲んでね」と自然と仲間に入れてもらえる。役に立ったという感覚がないのに感謝さえしてくれるのです。初めて家族以外に、自分の存在そのものを認めてもらえた気がしました。

 あるおばあちゃんの食事介助をしたときのことです。施設の職員の方からは「これが最後の晩餐(ばんさん)かもしれないんだよ」と言われました。「この方たちは皆さんご高齢なので、明日死んでもおかしくない。だから大事に」と。その責任の重さに動揺してしまいました。自分のような子どもの勉強のためにやらせてもらっていい仕事なのだろうかと。

 実際にやってみると、口に食べ物を持っていくタイミングがおばあちゃんとまったく合わないんです。結局、食べ物の半分以上を床に落としてしまいました。しかし、おばあちゃんは満面の笑みで「おいしかったよ、ありがとうね」と言ってくれました。その対応がとてもかっこよく見えて、「大人ってこういう人のことなのか」と思ったのを覚えています。

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2時間泣き続けた初めてのお看取り