■ミニ新幹線区間だけで活躍する専用電車

 山形新幹線区間にあたる福島~新庄間と秋田新幹線区間にあたる盛岡~大曲~秋田間では、「つばさ」「こまち」のほかに普通列車が運行されている。このうち、秋田新幹線の大曲~秋田間は従来の狭軌(1067ミリ)とミニ新幹線用の標準軌(1435ミリ)がそれぞれ単線で並ぶ「単線並列」という方式が取られており(一部区間は線路が3本引かれた三線軌条)、「こまち」と狭軌用の列車が並んで走ることもある。それ以外の区間では専用の標準軌電車の出番となる。

 山形新幹線で活躍しているのは719系5000番台電車と701系5500番台電車。前者はJRグループ初の在来線標準軌用車両として1991年にデビュー。外観は東海道本線などを走る211系と似ており、ステンレスボディーにグリーンとオレンジ色のラインが施されている。3扉車の2両編成が基本で、車内にはセミクロスシートを配置、1両はトイレつきとなっている。後者は東北本線北部や奥羽本線などに幅広く投入されてきた701系電車の標準軌タイプで、帯色は719系5000番台と共通。特色としては、急勾配対策にディスクブレーキや砂撒(すなまき)装置を備えていることだが、車内はすべてロングシートになっている。

 秋田新幹線には同じ701系グループの5000番台が充当されている。こちらは座席の一部をクロスシートとしているが、通路を挟んだ片側をロング、片側をボックス席とする「千鳥状」配置となっているのが特徴だ。車体にはパープル、白、ピンクの帯を巻いている。

■「青春18きっぷ」泣かせの区間?

 この両区間を、あえて普通列車に乗ってみるのも面白い。筆者も何度か乗ったことがあるが、新幹線電車とはまったく異なるローカル線の味わいが堪能できるなど、好きな鉄道シーンのひとつでもある。

 山形新幹線の福島~米沢間には鉄道における難所のひとつとしても名高かった板谷峠があり、「つばさ」でさえ速度を落としているが、各駅に丁寧に停車していく普通列車で足跡をしるしながら行くのもまたオツなものだ。かつてスイッチバック駅だった赤岩、板谷、峠、大沢の各駅のうち、赤岩を除く3駅には雪避けのシェルターが設置されており、途中下車をしながらかつての鉄道名所を探訪するという楽しみ方もある。

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難所が続く山岳路線