国立ヘブライ大学での講義の様子(撮影/ニシム・オトマズキン)
国立ヘブライ大学での講義の様子(撮影/ニシム・オトマズキン)
国立ヘブライ大学のキャンパスでくつろぐ学生たち(撮影/ニシム・オトマズキン)
国立ヘブライ大学のキャンパスでくつろぐ学生たち(撮影/ニシム・オトマズキン)
Nissim Otmazgin(ニシム・オトマズキン)/国立ヘブライ大学教授、同大東アジア学科学科長。トルーマン研究所所長
Nissim Otmazgin(ニシム・オトマズキン)/国立ヘブライ大学教授、同大東アジア学科学科長。トルーマン研究所所長

 今年の5月、日本のリクルートという会社の人たちがエルサレムのヘブライ大学に来ました。ヘブライ大の私の教え子たちである日本語を話せるイスラエル人学生を雇用するために面接しにきたのです。同社によれば、海外の大学で面接をするのは、米ハーバード大、英オックスフォード大に続いて3番目ということです。

【写真】キャンパスでくつろぐ学生たち

 面接した日本人を驚かせたことの一つがイスラエル人学生の年齢です。学部の学生は24~27歳。イスラエルは国民皆兵ですから、高校を卒業して男子3年、女子2年の兵役につきます。そして数カ月間の海外旅行。この後、ようやく大学に入学してくるのです。

 今回は私の経験に基づき、両国の大学制度や学生生活についていくつかの相違を話したいと思います。

 まず両国の大きな違いの一つとして、最初に書いたようにイスラエル人は高校を卒業して兵役につくことがあげられます。これが終わると、バックパッカーとしてアジアや南米を貧乏旅行します。最近ではインド、ネパール、ペルー、グアテマラなどに行く人も多いですね。もちろん日本に来る若者も多いです。

 兵役と旅行を終えた6割のイスラエル人は大学や短大に進みます。医学部やロースクールを除き、大学に入るのは日本より比較的やさしく、学費は安いです。しかし、イスラエルの大学は入学してからの勉強が相当たいへんです。多くの文献を読み込んで研究し、厳しい試験を通過しなければ卒業できません。米国の大学とよく似ています。

 講義の仕方にも違いがあります。私が大学生のときに教わった日本研究家のエフド・ハラリ教授を思い出します。ハラリ教授は最初の講義のときにこう話しました。
 
「みなさん、私が教えたことをオウム返しのように繰り返すことばかりしないでください。ときには立ち上がり、私が間違えたことを教えてほしい。そうすれば私はとても幸せです」

 現在、私はヘブライ大の大学教授としてイスラエルの学生に教えていますが、最もいい授業は「学生たちが多くの質問をする、自分たちの考えを説明する、そしてクラス全体が議論の場となる」ことだと思います。

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Nissim Otmazgin

Nissim Otmazgin

〇Nissim Otmazgin(ニシム・オトマズキン)/国立ヘブライ大学教授。トルーマン研究所所長を経て、同大学人文学部長。1996年、東洋言語学院(東京都)にて言語文化学を学ぶ。2000年ヘブライ大学にて政治学および東アジア地域学を修了。2007年、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修了、博士号を取得。同年10月、アジア地域の社会文化に関する優秀な論文に贈られる第6回井植記念「アジア太平洋研究賞」を受賞。2012年、エルサレム・ヘブライ大学学長賞を受賞。研究分野は「日本政治と外交関係」「アジアにおける日本の文化外交」など。京都をこよなく愛している。

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イスラエルの学生が驚いた「課外授業」