その時、最終ラインを統率していたのが、現代表キャプテンの吉田麻也であり、右サイドバックに入っていたのが酒井宏樹だった。ロシアワールドカップで最終ラインを担った2人と大舞台で共演し、連携面で他のGK2人より計算できる点が今回抜擢された1つのポイントではないか。

 さらに言うと、出場機会こそなかったが、2011年アジアカップ優勝、2014年ブラジルワールドカップ惨敗を代表の一員として経験したことも大きなアドバンテージだ。苦境に陥った日本代表をベンチから支えた黒子の経験も森保監督にとっては心強い材料になっているはずだ。

 もう1つ挙げるなら、2016年1月から1年間、オーストリアのSVホルン(当時2~3部)に在籍したことも見逃せない点。5大リーグ以外の下部リーグといえども、日本人GKが海外に出て定位置を確保することがいかに難しいかは、欧州8年間のキャリアを誇る先輩の川島もしみじみ語っていることだ。

「欧州のGKのレベルが高い中で、日本人GKを欧州のクラブが獲るかと言ったら、そう簡単じゃない。言葉が喋れなくても、フィールドの選手だったら獲ってもらえる可能性がありますけど、GKはまず獲ってもらえない。欧州クラブにとって一番大切なポジションに未知の選手を使うかと言ったら、それはしない。自分はそれを変えていかないといけないと思って決断して、2010年に外へ出たんです。自分の前に海外へ出ていった(川口)能活さんは本当にすごいと思いましたし、後にチャレンジしたゴンちゃん(権田)もいいきっかけだと感じた。ベルギー3部でプレーした林(彰洋)も頑張っていたと思いますよ」

 日本屈指の国際経験値を持つ守護神の言葉を踏まえると、権田のキャリアには他のライバルにない強みがある。自身が選手時代に海外でプレーしたことがなく、ワールドカップ出場もあと一歩で阻まれた森保監督にしてみれば、そこが大きな拠り所になるのは確かだろう。

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外国人の壁に阻まれる日本人GK