しかしながら、権田自身が「自分が正GKというふうには思っていない」とコメントしている通り、現段階での彼は日本代表でまだ頭抜けた存在とは言い切れない。ここまでの5試合を見ても、苦手としている左足のキックを狙われてコントロールが狂ったり、最終ラインとのコンビネーションがかみ合わなかったりと、まだまだ改善の余地が少なくないからだ。

 「身長197cmと日本人離れした体躯を備えたシュミット・ダニエルを起用して育てていくべきだ」という声も根強いだけに、今大会は権田がファーストチョイスだとしても、まだまだ混沌とした状況が続いていくと見るのがベターだろう。

 権田は今大会の後、ポルトガルリーグ1部のポルティモネンセへ移籍する。そこでコンスタントにピッチに立ち、FCポルト、ベンフィカ、スポルティング・リスボンといった欧州リーグ常連クラブとの試合で実戦経験を重ねていくことができれば、欧州5大リーグへの道を開いた川島の後を引き継ぐことができる可能性は高い。

 ただ、川島や権田の後に続く選手が次々と出てこない限り、「国際経験」という問題は常につきまとう。シュミットやロシアワールドカップメンバーの中村航輔、2020年東京五輪世代のベストGKと言われる小島亨介ら若い世代の海外進出の動きが加速して初めて、日本代表正GKを巡る真の意味でのサバイバルが始まるのではないだろうか。

 もっとも、海外にばかり目を向けるのではなく、JリーグにおけるGKの環境改善も重要なテーマだ。というのも、外国人枠拡大で、外国人GKがより一層増える可能性が高いからだ。J1連覇中の川崎フロンターレのGKがチョン・ソンリョン、昨季アジアチャンピオンズリーグ王者・鹿島の守護神がクォン・スンテ、名古屋グランパスのGKが元ボルシア・ドルトムントのミッチェル・ランゲラックというように、すでにJ主要クラブのGKが外国人に席巻されているのは紛れもない事実。

 その現状を目の当たりにして、昨季限りで現役引退した楢崎正剛も「GKが日本人の弱点と言われるのは辛い。日本のGKのレベルを上げられるように何とか力を尽くしたい」と語っていたほどだ。狭き門になってきた若い日本人GKの出場機会をどう増やしていくのか。そこを考えなければ、若く才能あるGKを海外に送り出すこともできないし、日本代表に抜擢することも難しいだろう。

 今回のアジアカップは、日本のGKを取り巻くさまざまな問題を再認識するいい機会になったはず。権田自身も自らの課題を克服する努力をすべきだし、それ以外の守護神もどうすれば国際大会のピッチに立てるようになるかを真剣に模索していってほしいものだ。(文・元川悦子)