店に入るやいなや、独特のハイトーンな声で呼びかけられた。
【写真】イラッシャイマセ! はま寿司の制服を着用したペッパー君はこちら
「イラッシャイマセ。ウケツケハコチラデス」
「ナンメイサマデスカ」
「テーブルトカウンター、ドチラガヨロシイデスカ」
声の主は、ロボットブームの立役者でもある人型ロボット「Pepper(ペッパー)」だ。
全国に498店ある回転寿司チェーン「はま寿司」は、すべての店舗にPepperを導入している。魚のイラストがデザインされた制服に腰にはサロンをぐるりとひと巻き。しっかりと帽子をかぶったPepperが、入店する客に声を掛ける。胸に張り付いたタッチパネルで人数や席を選択すると、冒頭のように接客してくれる。無事に受付を済ませられれば、「2メイサマ、ゴアンナイ!」と威勢の良い声を張り上げる。
「ペッパー君は立派な従業員の一人です」
そう話すのは、「はま寿司」を展開するゼンショーホールディングス広報室の今村基聖主任だ。ペッパー君への愛情を隠さない。
ソフトバンクグループのソフトバンクロボティクスがPepperを法人向けに展開したのは2015年10月のこと。そのレンタル契約の期間は「3年」なので、今年の10月から“契約更改”のシーズンを迎えている。だが、「日経xTECH(クロステック)」の調査によれば、契約の更新を予定している企業がわずか15%にとどまっていることがわかり、AERA dot.でも<ペッパー君さようなら 8割超が“もう要らない>と既報している。
更新しない理由として「うまく活用できない」という声が多いようだ。確かに3年前の発表時のインパクトは強かったが、時代の趨勢とともに目新しさは失いつつある。だが、「はま寿司」のペッパー君は「いきいきと活躍している」と、今村さんは胸を張って言う。
同社は、2016年10月にPepperを導入。“初任地”はオフィス街のウィラ大井店(東京都品川区)だった。その後、年配の利用者が多い真岡店(栃木県真岡市)、学生やファミリー層が多く来店する浦和店(埼玉県さいたま市)での試用期間を経て、2017年12月に全店舗での導入が実現した。
当時、耳目を集めたPepperだったが、実は、社内の9割以上が“雇用”に反対していた。「ロボットが案内する想像がつかない」「どう扱えばいいのか分からない」などの反対意見が上がっていたが、「はま寿司」では今や欠かせない存在になっている。