■奥田瑛二が手助けしなかった本当の理由

 退廃的な空気が漂う一癖ある役を演じることも多い安藤。一方、父は俳優で映画監督の奥田瑛二、母はエッセイストでタレントの安藤和津(70)。よく演じている役柄とは真逆の恵まれた環境で育ったように思われるが……。

「中学、高校時代は家族が興味を持たない部分を突き詰めようと思い、ギャルやヤンキーに憧れていたそうです。飲食店でアルバイトもしていて、本人いわく『その時の経験は役に立っているのかも』とインタビューで明かしていました。それが今の確かな役作りに繋がっていると思いますし、何より同業者も圧倒されるほどの存在感。それによって、視聴者は彼女の演技にひき込まれていくのではないでしょうか」(前出の映画ライター)

 芸能リポーターの川内天子氏は、安藤の魅力についてこう語る。

「父である奥田瑛二がデビューに際し『手助けしない』と言ったという話は、裏を返せば奥田は『手助けする必要はない』と思ったからでしょう。歌舞伎役者に育った子と同じで、安藤は幼い頃から芝居というものをたっぷり肌で感じ取っていたんだと思います。案の定、デビュー後間もないのに『愛のむきだし』で見せた凄まじい演技が評価され、女優としてすぐに華開いた。そこから数々の映画賞をとっていったのは周知の通りです。最近で言うと『万引き家族』で見せた暗い表情と『まんぷく』の天真爛漫さは真逆ですが、両方ともハマっているので違和感がまったくない。安藤の演技というのは余裕があり、ゆらぎがない。どんな役にも対応できるので視聴者も安心して見ることができます」

 今回の朝ドラで、安藤の役の振り幅の大きさに改めて驚いた人も多いだろう。劇中では18歳から50代までを演じるとか。今後もどんな演技を見せてくれるのか楽しみだ。(ライター・丸山ひろし)

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丸山ひろし

丸山ひろし

埼玉県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集業務に従事。その後ライターに転身し、現在はウェブニュースや、エンタメ関連の記事を中心に執筆している。

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