安倍さんと加計さんは40年来の親友であるという。13年の第2次安倍政権発足以来、少なくとも14度は接触し、安倍さんの奥さんである昭恵さんを含めた会食やバーベキューパーティー、ゴルフなどを楽しんでいたことが明らかになっている。

 加計学園による獣医学部の新設は、構造改革特区制度を活用する形で、07年から14年の8年間で15回も申請されたが、すべて却下されてきた。加計さんはそれほどの執念を持って、獣医学部新設に挑んでいた。

 そうした関係性と背景のもと、加計さんが首相となった安倍さんとプライベートな時間を過ごす中で、獣医学部の新設についてまったく話さなかったというのか。自分に置き換えて考えてみればわかるが、心を許した友に、自らが心血を注いで行っている挑戦について話さないというのは不自然だろう。

 安倍さんは「加計さんとは仕事の話はしない。何か頼まれるようなことはなかった。だから友人関係が続いている。加計さんは新しいことにチャレンジしたい、新しい学部を作りたいというような話はしていたが、獣医学部の新設で特区申請する話は聞いていない」旨、発言している。

 僕も知事や市長時代、友人などから行政のおかしな点や、具体的な提案はさんざん聞いた。その際、「分かった。改革に挑戦してみる。だけど事業者選定は公募だから、お前のところに仕事が行くかどうかは別だからな」と返していた。

 安倍さんと加計さんの間柄なら、安倍さんが加計さんに、じゃあ具体的にどんなことにチャレンジしたいのか、と突っ込むのが普通だろう。新しいことにチャレンジしたいと言われて内容も聞かずに、「そうか頑張れ」とだけ返すような、そんな大人の会話がどこにあるものか!

 加計学園問題で広く知れ渡ることになったが、日本では獣医学部がこれまで50年以上にわたり、新設が認められてこなかった。そのこと自体が異常だと思う。

 その裏にあるのは、獣医師会の意向だ。獣医師が増えるほど激しい競争にさらされるため、獣医師会としてはその数を抑制したい。そこで獣医師会の政治団体「日本獣医師政治連盟」は政治や行政に働きかけ、政治や行政もそれに応え、獣医学部の新設を認めないようにしてきた。ちなみに大学の学部設置が抑制されているのは、現在、医学部、歯学部、獣医学部、船舶職員養成学部の4分野。

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学部新設置に法律改正は必要ない?