安倍晋三首相が、自らの悲願である憲法改正に向けて準備を加速させている。

 一方、安倍首相主導による改憲スケジュールに野党は強く反発。参院で野党第一党の国民民主党・玉木雄一郎代表は、自民党の改憲案について、フルスペックの集団的自衛権の解禁という本当の目的を隠した「ステルス改憲」だと批判する。そのうえで、改憲に慎重姿勢を崩さない公明党と議論していくことに意欲を示した。

 その真意とはどのようなものなのか。玉木氏に聞いた。

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──安倍首相が次の国会で憲法改正の自民党案を提出し、早期の発議を目指す方針を明らかにしました。

 まず前提として、憲法は国民のものです。憲法は法律とは違い権力者、あるいは権力の行使を縛る。だから、憲法改正は主権者である国民の総意で「変えたい」と思っている部分を変えるべきで、権力者の都合で変えるものではありません。だから、憲法改正には「理由」が大切なのです。

 安倍政権の特徴は、モリカケ問題に代表されるように権力を私物化していること。その流れで改憲も私物化している。憲法を軽視し、特定の権力者が、自らの満足感のために憲法を変えようとしている。「歴史に名を残したい」は理由になりません。

──安倍首相は憲法9条に自衛隊を明記することを憲法改正の理由に掲げています。

 安倍首相は、自衛隊員の子供が「自衛隊は憲法違反だ」と言われるから憲法の条文に自衛隊を書き込みたいと説明しています。では、自衛隊の明記を掲げて国民投票をして、仮に否決されたらどうなるのか。今年2月の国会で私がその質問をしたところ、安倍首相は「自衛隊が合憲であることは変わらない」と答弁しました。可決されても否決されても何も変わらないということのようです。では、何のために国民投票をするのでしょうか。

 自衛権と自衛隊の存在については、戦後の内閣が憲法9条の解釈をガラス細工のように積み重ねてきました。それを「合憲化する」といって国民投票にかけたのに否決されたら、これまでの憲法解釈が不安定化してしまう。今では共産党でも「自衛隊の廃止」は主張していません。そのなかで、自衛隊の存在をテーマにした二者択一を国民に迫ることが必要だとは思えません。

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安倍改憲はステルス改憲