──野党が安倍首相の改憲案に反対しても、衆参ともに憲法改正を推進する議員が3分の2を超えています。憲法改正の発議は実現するのではないでしょうか。

 そうとは限りません。公明党は、「野党の意見も大事」と慎重姿勢を崩していません。そもそも公明党は、「平和の党」という価値観から生まれた政党で、憲法改正については我が党と意見が近いところもある。今後は、憲法審査会などを通じて、公明党と積極的に議論をしていきたい。自民党とは違って、一致できる部分が多いと思う。

──自民党内では、来夏の参院選までに国民投票を実施すべきだという意見もあります。

 憲法改正には作法があります。外国では、与野党が合意したものだけを発議することを慣習化している国もある。それに比べて安倍さんは野党を排除しており、邪(よこしま)なものを感じます。

 現行憲法ができてから70年以上たち、議論すべき事がたくさんあることは確かです。たとえば、結婚について「両性の合意のみに基づいて成立」と定めている24条も、LGBTの方々も含め、多様なライフスタイルを認める形で議論されなければなりません。

 憲法改正は与野党一緒に、より多くの国民の合意を目指してていねいに行われるべきです。このことは、自民党の議員でも同意してくれる人はいるのではないでしょうか。むしろ、安倍首相の考えているような内容での憲法改正は、自民党では少数派だと思います。

──教育の無償化や緊急事態条項なども改憲の項目にあがっています。

 教育の無償化は、政権が本気になって法律と予算措置をすればできる。たとえば、現行憲法で規定されている義務教育について、法律で小中学校以外にも範囲を広げればいい。義務教育にしなくても、民主党政権では高校の無償化を実現しました。法律でできることをわざわざ国民投票することに、どれほどの意味があるのか。改憲の賛同者を増やすために、便宜的に提案しているとしか思えません。

 緊急事態条項は、議員の任期延長については議論する価値がありますが、自民党素案にあるような、曖昧な基準で私的権利を制限する権限を内閣に与えることは許されません。

(聞き手/AERA dot.編集部・西岡千史)