どちらかの仕事が忙しい時は、手が空いているほうが雑事を引き受けるなど、あうんの呼吸で上手にバランスをとっている2人。相性の良さに加え、相手を思いやる気持ちが共同生活を快適なものにしているようだ。

 ひよささんとうにささんが、現在の家に引っ越してきたのは4年前。気づけばルームシェア歴も15年を超えた。最初は調理道具の扱い方ひとつとっても、習慣が違うためにイライラしていたという2人。けれど心地よく暮らすためには歩み寄りが必要と考え、徐々に折りあいをつけていったそう。

 今でもささいな言い合いを発端とするケンカはしょっちゅう。共同での仕事が多いため、ひとたび揉めると効率が落ちるのが悩みの種だ。とはいえ、気軽にケンカすらできない間柄より、よほど健康的なのでは?

「確かにそうですが、仕事に支障が出ること以上に不便なのが、日常のちょっとした会話ができなくなることなんです。『そこの角に白いがいたよ』とか、どうでもいい話ができるのが、同居の醍醐味なので」とうにささん。ひよささんも「そう、あの件について怒っているから口はききたくないけれど、猫を見たことは言いたい(笑)」。

 最後に、お互いがいて良かったと思うことを伺った。

「身内に何かあった時など、事情をよく知っていて、心配してくれる人がそばにいるのは本当に心強いです」(うにささん)

「こちらが何も言わなくても、しんどさを理解してもらえるのはありがたい。私は察してほしいタイプなので」(ひよささん)

 年齢的には、そろそろ郷里の親のことなども気にかかる。

「それも、1人で2人の親を見るよりは、2人で4人見たほうが心強い。2人でできることを考えていきたいですね」

 友達以上家族未満のマイペースな共同生活は、この先も穏やかに続いていくに違いない。

(文/上田恵子)

※「ゆとりら秋冬号」から抜粋