ハリルジャパンに新たな“引き出し”をもたらす期待感を抱かせた武藤嘉紀 (撮影・六川則夫)
ハリルジャパンに新たな“引き出し”をもたらす期待感を抱かせた武藤嘉紀 (撮影・六川則夫)

 ニュージーランドを迎えてのキリンチャレンジカップ2017が10月6日に愛知県の豊田スタジアムで行われ、日本は大迫勇也のPKで先制すると、一時は同点に追いつかれたものの交代出場の倉田秋の代表初ゴールで2-1の勝利を収めた。次の試合は10日、日産スタジアムでハイチと対戦する。

 今大会に臨むにあたり、ハリルホジッチ監督は「出場機会のない選手にチャンスを与えたい。2試合ですべての選手を使う」と明言していた。ニュージーランド戦のメンバーに、代表初スタメンとなる選手は一人もいなかったものの、その中で注目したのが2015年11月のシンガポール戦以来、約2年ぶりの先発出場を果たした武藤嘉紀だった。

 日本の布陣はGK川島永嗣、DFが右から酒井宏樹、吉田麻也、槙野智章、長友佑都、ダブルボランチに山口蛍と井手口陽介、トップ下が香川真司、そして前線は右から久保裕也、大迫、武藤という4-3-3だった。

 ハリルホジッチ監督が武藤に与えた指示は「裏に抜け出してくれ。チームとは違うポジション(マインツでは1トップ)だけど、左でやってくれ」ということだった。その言葉通り、前半22分に香川のパスを受けて左サイドをドリブルで突進し、左足を振り抜く。しかしシュートはゴール枠を捕らえることはできずに左へ外れた。

 武藤は1-1の同点の後半25分に乾貴士との交代でベンチに退いた。「欲を言えば点を取りたかった」というのは偽らざる本音だろう。そして「前半のシュートは枠に入れないといけなかった。自分でゴールを決める力は必要だと思う」と素直に反省した。

 ただ、この試合では「裏に抜け出る」プレーだけでなく、新たな発見もあった。

 基本的に武藤のプレーをスタートさせる位置は左サイドである。そして大迫は中央だった。しかし日本がボールを保持してビルドアップしている間に、大迫がバイタルエリアに下りてくると、武藤がそのスペースに入り、ポストプレーから大迫や香川のシュートを引き出していた。

 まず前半10分、山口からの右クロスを武藤が胸で落として大迫のシュートを引き出す。同13分にも吉田の縦パスを武藤が戻すと再び大迫がシュート。同18分には右サイドの井手口からのパスを引き出し、ワンタッチで右アウトサイドの久保にパスを出したが、これは相手DFにカットされた。同23分には武藤が頭で落としたボールを山口が拾うと、ヒールキックから香川のシュートに結びつける。

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