結果、2月10日に行われた初の日米首脳会談では、それまでのトランプ氏の様々な主張は封印され、日米共同声明には、日米同盟はアジア太平洋地域における平和の礎、辺野古基地建設は普天間閉鎖の唯一の解決策……といった言葉が並んだ。トランプ氏の口からは、「米軍を受け入れてくれて感謝」という言葉まで飛び出したのである。

 トランプ政権以後も、特に安全保障分野においては、これまでの日米関係が続くことがほぼ確実になった。

 その後、北朝鮮のミサイル発射などを経て、日本は、安保法制の下、初めて自衛隊の米艦防護を実施するなど、日本がトランプ政権の「力の外交」を下支えする構造が具体的に見え始めている。

 安全保障面で日本の負担増を期待するアメリカの思惑と、軍事力重視の安倍政権の思惑が合致して、この「力の外交」を重視する風潮はこれからも加速していくものと考えられる。

 しかし、これは、多くの人々の望んでいる外交なのだろうか。

 4月に北朝鮮の挑発に対しアメリカが空母を送り、武力で対応すると耳にしたときに、「ひょっとすると、自分自身が影響を受ける事態になるかもしれない」と背筋に冷たいものが走った人も少なくないだろう。私はこれまで北朝鮮のミサイル発射を受けてもそのような具体的感触をもつことはなかったが、今回初めて、そのような感覚を覚えた。

 ふとしたことをきっかけに、あっという間に軍事的行動がエスカレートしうることは、過去の多くの例が教えてくれている。

 このような軍事的な対応を望まない人々も日本には多いはずである。

 これまで私は沖縄の基地問題を中心に、現在の外交に届いていない声を日米外交の場に届けたいと、ワシントンでアメリカ政府や議会への直接の働きかけを行ってきた。アメリカの議員に会って沖縄の人たちの声を伝えたり、沖縄の方々のワシントンでのロビイング活動を企画したり、といった活動を続けてきている。

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