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一気に110億円に増えた防衛省の委託研究 科学者たちが反対の声をあげる理由とは?

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ミサイルとロケットは、基本構造に差はない (c)朝日新聞社

ミサイルとロケットは、基本構造に差はない (c)朝日新聞社

 大学の軍事研究が物議をかもしている。日本学術会議が新たな声明を出した理由とは……。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞科学医療部・竹石涼子さんの解説を紹介しよう。

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 ノーベル賞で有名なアルフレッド・ノーベルが発明したダイナマイトは、鉱石の採掘などに使われる。一方、爆薬や銃弾用の火薬(火薬類)は、人を殺し、傷つける武器にもなる。細菌やウイルスの研究は、ワクチンづくりや医学の発展に役立つが、生物兵器に悪用される危険性もある。音波は、めがね洗浄器などにも、戦争で潜水艦が敵を見つけるためにも使われる。弾頭を載せたミサイルと科学探査衛星を運ぶロケットは、基本構造に差はない。こうした科学技術の性質をデュアルユースという。

 日本の大学などは長く、防衛研究や軍事研究とは一線を画してきた。第2次世界大戦で研究者が国家のために戦争に協力したことを強く反省したからだ。科学者の代表機関である日本学術会議は1950年と67年に軍事目的の科学研究を行わないとする声明を出した。

 それから数十年後の今年、日本学術会議は軍事研究への危機感を示す新たな声明を正式決定した。背景には、近年の政府の科学技術政策の「軍事が学術に接近する動き」がある。宇宙開発などに関する決まりや計画に、国家の安全保障に貢献することが盛り込まれ、「平和目的に限る」という表現が削除された。防衛装備庁の大学などへの委託研究「安全保障技術研究制度」の予算は、初年度の2015年度は3億円。17年度は一気に110億円に増えた。

「軍事研究は、生活に役立つ技術や産業の振興にもつながる」との意見もある。これに対し、日本学術会議の検討委員長の杉田敦・法政大学教授は「それは本来、民生向けの研究費でなされるべき研究だ。“軍事予算”である必要はない」と話す。

 かつてベトナム戦争でアメリカ軍が使用し、大きな健康被害を出した枯れ葉剤開発の元になったのは、一見、軍事とは関係がなさそうな植物ホルモンの基礎研究に関する一本の論文。論文著者の故アーサー・ガルストンは想定外の使われ方でも「科学者も結果に責任がある」と考え、枯れ葉剤兵器をやめるまで、大統領と政府への抗議活動を続けた。

 人に役立つための技術が思わぬ使われ方をすることはないか。守るべきは国の利益か人類の平和か。科学者だけでなく私たちみんなが考え続けないといけない。(解説/朝日新聞科学医療部・竹石涼子)

【キーワード:デュアルユース】
科学技術のなかには、軍事的な目的にも、民生(人々の生活)的な目的にも役立つものがある。こうした「もろ刃の剣」の特性をデュアルユース(両義性)と呼ぶ。日本の防衛省の機関である防衛装備庁が大学などへの委託研究を始めたことで、学問の自由や大学の自治への影響をめぐり、注目が集まっている。

※月刊ジュニアエラ 2017年5月号より


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