犬のエル(写真奥)は年老いたおばあちゃんと仲良く暮らしていました。一緒に寝て、一緒にごはんを食べ、エルはおばあちゃんの自慢の娘でした。しかし、そんな幸せは長く続きませんでした。おばあちゃんの認知症が進んだのです。
 おばあちゃんはエルと一緒に暮らせるグループホームを見つけて入り、私とエルはそこで出会いました。
 おばあちゃんはそのホームで亡くなりましたが、最期までエルのことを心配していました。
 大丈夫! エルは私と一緒に暮らすよ、と言うと安心して笑っていました。
 私はそのホームを定年退職し、エルをわが家に迎えました。エルにとっては3度目の引っ越しです。
 退職後に、私は仲間と小さな古い家を借りてデイサービスを立ち上げました。
 ある日、その家に入ると、生まれたばかりの子の声が聞こえましたが、姿は見えません。翌日、職員と一緒に畳を上げ、床下を捜すと3匹の子猫がいました。
 3匹の里親を探し、ほっとしたのもつかの間、また鳴き声が。小さなかよわい鳴き声です。
 呼んでも出て来ないので業者に頼むと、壁のすき間に挟まっているとかで、壁を壊す騒ぎになりました。
 なんとこの子猫は4日間、暗闇で鳴き続けていたのです。彼は私が育てることにして連れ帰りました。名前は「壁ちゃん」。後に改め、「カーベ」です。
 カーベ(同手前)は母の温もりをエルに求め、エルもそれを許してカーベを守りました。カーベは現在4歳。柿の木に登ったり、メジロを狙ったり、一日中跳びはねて遊び回っています。
 エルは15歳まで生き、1年前、おばあちゃんのいる天国に4度目の引っ越しをしました。そして、私たちを見守ってくれている……と思っています。

(井上洋子さん 長崎県/70歳/デイサービス代表)

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