日本も晩婚化が進み、結婚しない女、できない男が増えているという。
 私もようやく40歳を過ぎてから年が半分ほどの妻と所帯を持った。子どもがいないこともあって妻が犬を切望し、週末はあちこちのペット店を見て探し歩いた。今にして思えばそのころが幸せだったのだと思う。幸せのど真ん中にいると気付かないものである。
 犬探しを4カ月しているうちに、ヨークシャーテリアを可愛く思うようになった。
 毛は抜けないし散歩は庭先くらいでよく、イギリス産で飼いやすいらしいということも知った。
 家探しと一緒で(嫁も?)ペットも可愛いのを見つけ、いいなと感じて翌週に行くと、もう買い手が決まっている──そんな失敗を数回繰り返し、見つけたのがピース(写真、雄)だ。
 最初見た時はネズミかと思った。体の毛の90%が黒く、生後5カ月で体重900グラム! わが家に来て4年たち成長したが、相変わらず小さく、1300グラムだ。
 犬用の首輪はどれも合わず、鈴が付いた用に穴を開けて巻いているので、歩く度にチリンチリンと鳴る。
 真夏に私がバリカンで毛を短く刈るとさらに小さくなり、脚は手羽先か割り箸くらいである。
 散歩中、側溝の継ぎ目から落ちて慌てて引き上げたら、ずぶ濡れで、まさにドブネズミだった。
 犬は絶対部屋では飼わんというのが私の方針で、玄関先で番犬として飼うつもりだったが、玄関で2日、リビングで5日過ごし、今は私と同じ布団で寝ている。
 妻はピースと1年6カ月過ごし、出ていった。あれから3年近くが経ち、ピースは今年5歳。私は50歳を超えた。連れ合いを探さなくては。
 ピースには見つかるかもしれないが……。

(下田泰典さん 福岡県/51歳/自営業)

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