エンターテインメントの根底にある「祖国」への視線

2011/02/24 17:32

 去年観た洋画で、特に面白かったものが三本あります。
『第9地区』と『オーケストラ!』と『瞳の奥の秘密』です。
 
『第9地区』は、南アフリカ共和国のヨハネスブルグ上空に巨大な宇宙船が出現。その中にいたエイリアンは難民状態で、結局市内の特別区域"第9地区"に隔離されて、人類と共存することになったという設定です。
 監督のニール・ブロムカンプは、南アフリカ共和国ヨハネスブルグ出身。19歳の時にカナダに移住し、ハリウッドでテレビドラマの3Dアニメーターなどをやっていました。この作品が長編映画第一作。『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソンが製作者としてバックアップした作品です。
 主人公は、第9地区を管理する大企業の職員。エイリアン達を新しい地区に立ち退きをさせるための交渉に赴きますが、そこでトラブルにあい、自分もエイリアン化していきます。差別していた側が差別される側にまわることになるのです。
 基本はSFアクション映画です。エンターテインメントです。でも、監督の出自から考えて、当然、アパルトヘイトを想起させます。
 何より象徴的なのが、ヨハネスブルグの空全体を覆う巨大な宇宙船です。
 故障して動かない上に、到着してから何年も経つので古ぼけている感じが本当に鬱陶しい。いくら攻撃してこなくても、空に蓋をされているようで、住んでいる人間はたまったもんじゃないだろうなというのが皮膚感覚でわかります。
 その閉塞感が、この映画を象徴しているように思います。

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