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ゲキ×シネ『蛮幽鬼』、完成披露試写会

文・中島かずき

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 ゲキ×シネ『蛮幽鬼』の完成披露試写会の舞台挨拶に出てきました。
 登壇者は、上川隆也さん、早乙女太一さん、稲森いずみさん、そして僕の四人です。
 
 ゲキ×シネとは、舞台を収録して映画館などの大スクリーンで上映するものです。
 そのうち他の劇団の物もやるかもしれませんが、今は劇団☆新感線の作品だけを映像化しています。
 舞台中継というと、よくテレビでやっている平面的な映像を思い出される方も多いでしょうが、ゲキ×シネの場合はカメラを10数台入れて多角的に撮影した物を編集するので、迫力も見やすさも違う。
 役者のアップなど、本番中には僕らも観られないカットも多くて、これはこれで新鮮な発見があったりします。

『蛮幽鬼』は、上記の三人の他、堺雅人さん、千葉哲也さん、山本亨さん、山内圭哉さんという芝居巧者をゲストに迎えているので、映像化しても非常に見応えがあった。
 確かに稽古中は間近で役者の芝居を見ています。
 ですが、本番になると劇場の最後尾かもっと後ろの調光室あたりから見ることになります。
 演出のいのうえは本番中も毎回チェックしていますし、僕も可能な限りは見て、気づいたことがあれば少しでも直していきたい。
 商業演劇や新劇の演出家や作家はあまりそういうことはしないようですが、小劇場上がりのスタッフは、このタイプが多いですね。
「商売にならなくてもいい、やりたいことをやるんだ」という思いから芝居に関わりだして、毎回劇場にいるのが当たり前だったところからスタートしているからでしょうか。
 ただ、そのために、毎回いい席を自分用にとっていたりしたら、制作に怒られますし、自分としても、一人でも多くのお客さんに観て欲しい。おのずと、邪魔にならない後ろの方に位置するわけです。
 なので、全体のチェックは出来ても、さすがに細かい表情まではわからないことがある。
 しかも役者さんというのは、本番になると、稽古場での芝居と全然変わる人が多い。やっぱりお客さんの前でやるというのは、違うのでしょう。しかも新感線の場合、かなりフィクショナルなシチュエーションが多いから、稽古場でジャージで演じるのと、衣装とメイクでビシッと形を作って、大がかりなセットの中で照明や音響がキッチリ入った上で演じるのとでは、気持ちは変わって当然かもしれません。
 市川染五郎さんなんかはその典型ですね。彼の本番でのテンションを見ると「ああ、板の上で育ってきた人は、やっぱり違うなあ」と、毎回思わされます。
 だから、ゲキ×シネになって初めて、「ああ、ここでこんな表情をしてたんだ」と思わされることも結構あります。

 今回で言えば、稲森さんの芝居がその印象が強かったですね。やはり美しい人はアップでも美しい。

『蛮幽鬼』で思い出深いのは、堺雅人さんです。
 ちょっとした情報の食い違いで、彼は立ち回りが出来ると聞いていたのですが、実際にご本人に聞いてみると、殆どやったことがないとのこと。
 その時にはサジという、僕の作品の中でも最強の部類には入るキャラクターを書いていたので、青ざめました。
 でも、そこからの彼の努力がすごかった。
 稽古場でも自分の稽古以外の時もずっと立ち回りを自主練していた。
 その結果、笑顔の殺人機械という彼でなければ出来ない役を見事に体現してくれました。
 ゲキ×シネでは、是非その辺も確認していただければと思います。

 千秋楽の日、堺さんの楽屋に挨拶にいったら、たまたま着替え中で上半身裸でした。身体中テーピングしているのですが、パッと見でも上半身が逞しくなっているのがわかりました。
「こんなに筋肉がついたのは生まれて初めてですよ」と、あの笑顔で言われた時には、ほんとにありがたいやら申し訳ないやら。
 次に出てもらうときには、もう少し楽な役にするからと心に決めています。

 ゲキ×シネ『蛮幽鬼』は10/2から全国で公開予定です。
 詳しくは公式ページでご確認下さい。
 


(更新 2010/7/29 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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