なおも満塁で7番・草野太郎が衛藤の「最後は一番いい球で勝負した」という217球目の直球を左越えに走者一掃の二塁打。9回裏2死から1イニング10得点の猛攻で15対14という奇跡の逆転サヨナラ勝ちを収めた。

 中津北は3回戦の大分豊府戦でも0対8の劣勢から小刻みに点を返し、5対10で迎えた9回裏に最後の望みを託したが、残念ながら2度目の奇跡は起きなかった。

 0対8と一方的にリードされた9回裏に一挙9得点で逆転サヨナラ勝ちという奇跡が起きたのが、2014年の石川県大会決勝、小松大谷vs星稜。

 星稜打線は小松大谷の左腕・山下亜文(現ソフトバンク)に8回までわずか2安打に抑えられ、点差は8点。9回の1イニングでひっくり返すのは絶望的と思われた。

 しかし、先頭の代打・村上健哉主将が四球で出塁し、次打者の代打・今村春輝の右中間三塁打で1点。春はレギュラーだった2人の3年生が二桁背番号に降格された屈辱をバネに奇跡の大逆転劇の扉をこじ開けた。

 4番・村上千馬も右前タイムリーで続き、2対8。直後、山下は暴投で二進を許す。ここで小松大谷は2年生左腕・木村幸四郎をリリーフに送ったが、流れを引き戻すことはできなかった。次打者・佐竹海音を空振り三振に打ち取ったにもかかわらず、振り逃げで出塁を許し、無死二、三塁。勢いづいた星稜は、梁瀬彪慶が左前2点タイムリー、エース・岩下大輝(現ロッテ)も左翼場外に特大の2ランと一気にたたみかけ、6対8と2点差まで追い上げた。

 さらに猛攻は続く。1死後、横山翔大の二塁打、谷川刀麻の中前安打で一、三塁とし、この回2打席目の村中の遊ゴロの間に7点目。今村も四球で2死一、二塁とし、村上が中前に同点打。そして、なおも一、三塁で佐竹が左越えに快打し、ついに逆転サヨナラ勝ち。8点差をはね返し、2年連続の甲子園出場を決めた。

 このミラクル大逆転は、海の向こうのアメリカでも話題になり、「USA TODAY」(電子版)のブログの中で「最もワイルドと言える9回だ」と紹介された。

 なお、両校は翌年夏の県大会準々決勝でも再対決。0対3とリードされた小松大谷が9回裏に4点を挙げて逆転。“サヨナラ返し”で前年の雪辱をはたしている。

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最大12点差からの大逆転劇