財務省の森友「決裁文書」改ざん事件後、首相官邸前で徹底究明を訴えるデモの仕掛け人は、安全保障関連法への抗議デモでムーブメントを起こした学生団体「SEALDs(シールズ)」の元メンバーらだ。その一人、諏訪原健さんがデモに対する思いを記した。
私が路上で社会に対して声を上げるようになったきっかけは、とても些細なことだった。2014年1月に、大学の後輩のノブカズから、「タケシくんに似ているアキくんっていう高校の先輩がいるんで会ってくださいよー」と言われて、よくわからないまま「アキくん」という人のところに遊びに行くことになった。何でも、その「アキくん」という人は、デモをやろうと考えているらしい。
ノブカズとは普段から政治の話をすることはあったのだけど、私ははっきり言って「ノンポリ」の部類に入る人間だった。政治に対しておかしいと思うことはあっても、そこから何か行動に移そうとはしない。それどころが、デモなんて「特別」な人がやる物騒なもので、やったところで大した意味もないと何となく思っていた。デモをやるくらいなら、政策的な議論を積み重ねるほうが建設的だと考えていた。
だからデモをやろうと考えている人のところに行くのかと思うと、正直ちょっと身構えた。ところが、ノブカズに紹介された「アキくん」というのは、どこにでもいそうな大学生で、ちょっと驚いた。しかもデモをやろうと考えている人が「デモって怖いよねー」なんて言うから、何だか拍子抜けした。
その日、私たちは夜遅くまで、政治や社会の話をした。
「先月国会で特定秘密保護法が通ったけど、次の選挙まで何もできないのだろうか」
「政治参加の手段は投票以外にもあるはずなのに、自分たちには使えないものになっているのではないか」
「それなら政治への参加方法を自分たちでつくり変えていく必要があるのではないか」
それまでは、政治に対して自分にできる働きかけをやろうなんて考えたこともなかった。自分は問題意識を心の奥で感じているだけで、結局「傍観者」でしかなかった。話をしながら、そのことを突き付けられているような気がして、何だか自分が恥ずかしくなった。