明治大学は高校日本代表クラスを相次いで獲得しており、経歴上の戦力では帝京大学に見劣りしない。それでも2015年度の主将で現サントリーの中村駿太は、在学中に「いい選手がたくさん入ってくるのになぜ勝てないのか」という質問にこう答えていた。

「僕が思うのは、プライドかな、と。自分のプライドを持ちすぎていて、コーチや周りの選手たちの言うことに素直になれないというか……。後輩にアドバイスされたら『ん?』となったり」

 この頃は、いまも指揮を執る丹羽政彦監督のもと「上下関係に関係なく言いたいことを言い合える」という文化を作り始めたタイミングだった。

 それと同時期の帝京大学の選手たちは、練習の合間に3人1組でそのセッションの反省や収穫を話し合ったり、「集合」の合図へ瞬時に反応したり、殺到する取材をメディアトレーニングで鍛えた談話発信能力で対処したりと、個人的な「プライド」にとらわれぬ行動で外部の大人たちを驚かせていた。

 帝京大学が5連覇をした年の2013年度に決勝戦を戦った早稲田大学の布巻峻介(当時3年で元副将、現パナソニック)は、その試合を34-41で落とした数カ月後に「点差以上の実力差はあった。皆、帝京を認めるところから始めないと」と話した。

 もちろん早明両校とも、ただ手をこまねいているわけではない。

 2018年に創部100周年を迎える早稲田大学は2016年、山下大悟監督が着任した。3度の日本一を成し遂げた清宮克幸監督のもと、2002年度主将として活躍。プロ選手生活や大学院通学などを経て、現職に就いた。

 山下監督は就任前に各大学のラグビー部を取り巻く環境を分析し、「帝京大学さんは、ラグビー部の勝利が大学のブランディングに繋がっている。組織としてうまく回っている。うちは、独自のことをやらなくてはいけない」と考え、クラウドファンディングで支援を募るなど、クラブの収益構造を改革した。また、パートナーシップ企業との連携で寮にビュッフェ形式の食堂を作ったことで、ラグビーをする上では避けられない体づくりの面に大きな効果をもたらした。

 清宮監督退任後から徐々に難儀するようになった戦力確保についても、確実に入学可能な枠(学内でラグビー部に割り当てられたスポーツ推薦、男子7人制ラグビーなどオリンピック競技での代表歴のある選手向けのトップアスリート推薦)を最大3名から4名に拡張した。

 そして、不合格の可能性がある自己推薦入試(面接や小論文などで合否を判定)、スポーツ自己推薦入試(スポーツ科学部に置かれた競技実績重視の入試制度)も活用すべく、専門の採用担当者による受験指導も充実させた。

次のページ