――あなたの小説の登場人物は「品格、品位」を重んじますよね。これはイギリス的な概念なんでしょうか。
品格は特にイギリス的ではなくて、どの文化にもある概念じゃないかな。人間というものはどの文化にいようとも、自分の人生には意味があった、大事なことを成し遂げたんだ、と思いたい。
たとえばウシは草を食べて、子どもを産んで、一生を終える、それで十分満足してるよね?(笑) ところが人間はそれでは満足しない。何かに卓越したとか、何かを成し遂げたとか考えたいものなんだ。犯罪者ですら「俺はすごいギャングだ」とか違いを見せつけたがる。
品格は人間というものを考える際に僕が一番大事にしている概念なんだ。欧米では「日本人は(西欧人と違って)面子を大事にする」なんて言われがちだ。でも僕から見れば欧米でも同じ。ただし「面子をつぶされる」とは言わないで、「品位を失った」と表現するだけ。
僕の作品では、非常に限られた人生を運命づけられた登場人物が、自分の境遇を受け入れて、できるだけ意味と品位のある人生にしようとする。つきつめれば僕らはみんな、そうやって生きていると思うね。
(取材・構成/ライター・鈴木あかね)