昨年、解禁となった電力自由化に新規参入した電気事業者(新電力)の中でシェア約4割を獲得した東京ガス。広瀬道明社長は8月24日、横浜市にある根岸LNG基地を視察後、取材に応じ、「一般的に電力の自由化への関心がなくなってきている。今後は関心のない方に、いかに提案していくかが求められる」と危機感を募らせた。
自由化により消費者は事業者を選べるようになったが、広瀬社長はこうも言う。
「メニューがたくさんあれば良いというわけではない。メリハリのあるメニューを提供していく。ネット社会にもしっかり対応してサービスを提供したい」
今後は電気使用量の少ない一人暮らしの顧客などへもアプローチする方針を示した。
「これまで東京ガスは電気使用量の多い世帯向けに拡大してきたが、限界はある。使用量の少ないお客様にも対応していきたい。料金設定以外に、サービスの面で充実を図るため、コンテンツを充実させていきたい」と語った。
今年4月からは本業のガスの自由化も始まり、「東京電力と日本瓦斯(ニチガス)が提携したことは、中長期的には脅威になる」と予測し、新規参入に対し、受けて立つ構えだ。
東京ガスは自社ホームページ上で、契約アンペア40Aの顧客が月間使用量200キロワット時以上を使用した場合、東京電力の料金よりも割安になる事例を紹介している。ガス・電気料金1000円に対し5~15ポイント還元する自社ポイント「パッチョポイント」など独自のサービスで顧客を拡大してきた。
電力事情に詳しい経済ジャーナリストの寺尾淳氏は今後電力業界を左右するのは、原発再稼働の動向と指摘する。
「原発は、ガス会社の発電方式の主力である液化天然ガス(LNG)火力よりも発電コストが安い。東電の場合、原発の再稼働待ちは1基もなく、東京ガスは価格競争に巻き込まれることなく、優位が続くだろう」
しかし、関西電力は、高浜原発2基の再稼働に伴い、値下げを実施。大阪ガスも値下げして対抗した。自由化の下、この後も競争が激化しそうだ。(佐藤拓也)