また、この人の心情は芸人用語で「マンキンでいく」である。これは万金丹(まんきんたん)を飲んでいるようなハイテンションで、自分のネタを最後までやり切ることから由来する言葉で、常に全力で笑いを取りに行く、という意味だ。
「世界の果てまでイッテQ」のロケでは、宮川大輔さんはチーズ転がし祭りに参加し、傾斜35度、全長50メートル以上の丘を全力で転げ落ちながらゴールした。その日本人の姿に会場は拍手喝采の嵐だったが、首や足首を大怪我した。しかし、帰国後の吉本新喜劇の舞台には包帯姿で舞台に立ち、それすら笑いに変えていた。
「すべらない話」でトークを展開する時は、立ち上がって、手振り身振りを交えながら擬音を使い、動きながら全力で喋る。あの姿が宮川大輔のスタイルであり、観るもの、聞くものは彼の虜となる。
また、すごいのは舞台を降りてからも全力なことだ。後輩のTシャツをいきなり破いたり(もちろんその後、新しいものを買ってあげたらしい)、衝撃的だったのは、楽屋でピースの綾部祐二さんをパンツ一丁にし、パンツごと綾部祐二さんを両手で持ち上げて、上下にブンブン振り回していたことだ。人はパンツで簡単に持ち上がるんだと衝撃を受けたのと同時に、宙に浮きながらも「大輔やりすぎだよ、マジでやりすぎ」とツッコミを入れる綾部祐二さんに対して、真剣な表情でやり続ける宮川大輔さんの姿に周りは大爆笑の渦だった。
こんなことは芸人であってもなかなかできることではない。
核家族化や格差社会、ストレスを多く抱える現代では人との繋がりが希薄になりつつある。常に真正面からモノゴトにマンキンで取り組むアツイ宮川大輔さんの姿は、私たちに元気をくれると思う。(文/元吉本芸人・新津勇樹)