日本では、政治スキャンダルの報道の陰に隠れた印象もあるが、現在報じられているISシンパのテロリストによるミンダナオ島占拠は、実はすごいニュースなのだ。なぜなら、日本人も観光でよく訪れるアジアの国にまで、ISの影響力が及んでいるということになるからだ。
ただし、このニュースを聞いて「なんとイスラム原理主義の影響力がアジアにまで!」と驚いている人は間違っている。イスラム原理主義の影響力は、とっくの昔にアジアを席巻しているのだ。
事実として、イスラム原理主義組織は、9.11以降、インド、中国、フィリピン、インドネシア、タイなどで、すでに結成され活動している。彼らの存在は、我々にとってもすでに物騒な隣人になっているのだ。
■「原理主義」はキリスト教発祥
そもそも原理主義という言葉は、イスラム教から生まれたものではない。原理主義とは、ファンダメンタリズムの訳語であり、もともとはキリスト教の人々から生まれた考え方だ。
ではどのようにして生まれたのか?
宗教学者の島田裕巳氏が『無宗教でも知っておきたい宗教のことば』(朝日新聞出版)で解説しているところをまとめれば、以下のようになる。
そもそもの始まりは20世紀初頭。当時は、ダーウィンの進化論の勃興で、神による人類創造説も否定されはじめ、また聖書自体についても「いつ誰によって書かれたのか」「内容はどの程度事実なのか」という学問的な研究が行われるようになっていた。つまり、キリスト教の説く「真理」に対して、疑問を投げかける人々が現れ始めたのだ。
アメリカにいた一部のプロテスタントの人々は、そうした動きへの反発から、「聖書に書かれていることは一字一句真実であり、そこに書かれていることにまったく誤りはない」という考え方を打ち出した。
これがファンダメンタリズム、つまり(キリスト教)原理主義だ。
キリスト教原理主義者達に言わせれば、イエスは5つのパンを5000人に配り、湖の上を歩き、死後復活したのは実際に起こった過去の出来事。それを信じないのは、不信心者なのだとなる。
多くの日本人には奇異に映る、このキリスト教原理主義だが、アメリカには今でも一定数の支持者がおり、進化論を学校で教えることに反対したり、また、人工中絶が聖書の教えに反するとして産婦人科医を襲撃する事件を起こしたりもしている。