今季のJ1リーグもちょうどシーズンの折り返し時期を迎え、第2登録期間(7/21~8/18)に合わせた移籍の動きが活発になっている。そんな中、ここまでは下位に沈むクラブの補強が目立つ。現在のところ最も目立った動きを見せたのが広島だ。
広島はJリーグ第17節が終わった時点で降格圏内の17位と苦しむ中、守備の要だったDF塩谷司がUAEのアルアインに移籍した。もっとも、これによって1億6000万円とも言われる移籍金が入り、巻き返しに向けた補強をしやすくなった。塩谷の穴はG大阪から元日本代表のDF丹羽大輝を獲得して埋め、さらに得点力不足が深刻な前線にG大阪を退団したFWパトリックを加えた。4バックのセンターを本職としていた丹羽が3バックの塩谷のポジションですぐにフィットするかは未知数だが、経験値が高く、積極的にコミュニケーションを取るタイプだけに、チームにポジティブな雰囲気もたらす期待は十分だ。
一方のパトリックは長期故障明けという不安材料もあるが、6月17日のJリーグ第15節・神戸戦でチームの攻撃を牽引した。パトリックは一昨年のドウグラス(アルアイン)、昨年のピーター・ウタカ(FC東京)が見せたような推進力と力強さをチームにもたらすはずだ。また彼はヘディングを得意とするため、ミキッチや柏好文のクロスが一層効果を発揮する可能性が高い。そして、パトリックの加入は丹羽と同じくメンタル面のプラスも小さくないと予想される。
その広島に丹羽とパトリックを送り出したG大阪はU-20日本代表の堂安律もオランダのフローニンゲンへと羽ばたいた。上位に付けるG大阪の補強策は主力選手の疲労が蓄積される後半戦に向けて総合力をキープする意味合いが強く、DF西野貴治を千葉からレンタル解除で戻し、韓国の城南FCからFWファン・ウィジョを獲得。クラブが以前から狙っていたという韓国人ストライカーは高さと運動量を併せ持つ選手で、ポテンシャルの高さに疑いの余地は無い反面、ゴール前のフィニッシュには波があり、Jリーグで初年度から爆発できるかは蓋を開けてみないと分からない。
ただ、G大阪は長沢駿、アデミウソンなど主力選手が健在で、新加入選手の結果を急ぐ状況ではない。それでも選手層を維持する意味で、西野やファン・ウィジョの獲得は効果的な補強策であることは間違いないだろう。
ピンポイントで効果的な補強を成功させたのが大宮だ。今季ここまで結果の出ていないドラガン・ムルジャがJ2の湘南へ移籍し、代わりに新外国人FWとして韓国の済州ユナイテッドからマルセロ・トスカーノを獲得した。ACLのノックアウトステージ・ラウンド16で浦和とも対戦したストライカーは、32歳ながらも現時点でフィジカル面の不安は感じられない。マルセロは空中戦の強さがフォーカスされがちだが、周りを生かすポストプレーやワイドに流れてのクロスなど、起点、アシストも含めオールラウンドにチャンスへ絡める。その意味で、昨シーズンまで大宮を牽引した家長昭博(川崎)に近い活躍が期待できるだろう。
ここまでの大宮は外国籍選手が目立った活躍をできず、開幕時の目玉だった大前元紀も時折輝きを放つものの、安定したパフォーマンスを発揮できない状況だ。そのためマルセロは売り出し中の江坂任といきなり2トップでコンビを組む可能性が高い。Kリーグでトップレベルの活躍を果たした選手はJリーグでいきなりブレイクするケースも少なくないだけに、現在16位の大宮が残留ラインに浮上するための強力なピースになりうる存在だ。