(c)2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
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「エルピス」といえば、鈴木さんの演技が「色気ダダ漏れ」とのトレンドワードになった。

「あれは本当に脚本と演出の力ですよ。とはいえ、『色気? やめて!』と同時に『よしよし、やっと気づいてくれたか!』っていう自分もいますけどね(笑)。

 この映画を観た後、たとえセクシュアリティーは違ったとしても、人を愛することや人と人のつながり、母親との関係について考えた、共感したと言ってくださる方が多くて嬉しいです。

 タイトルのエゴイストって『ん?』と思わせますね。エゴイスティックな人の話なのかなと。でも浩輔は、たぶんその真逆にいる人。愛する人のために何かをしたくなることを偽善や自分のエゴだと思ってしまっているけど、でも愛することとはそれ自体がエゴでもある。観た後でタイトルの意味がどう変わるかを感じてもらえればと思います」

(c)2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
(c)2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

■勇気持って変えるべき

 作品に大事なメッセージがあることも自覚する。鈴木さんは原作本のあとがきに記している。

「自らのセクシュアリティーを理由に命を絶つ選択を考えてしまうような少年少女が、この国から、この世界から、一人もいなくなることを私は願います」

「浩輔を演じたことで、自分が思っていた以上にいまの社会がいかに性的マイノリティーにとって生きづらい環境であるかを、あらためて知りました。特に思春期において自分のセクシュアリティーに悩むことは、命や精神的な安定性の問題になる。そこをなんとかするにはまず教育、そして社会の制度も変える必要がある。特に同性婚に関しては法制化を急ぐべきだという立場です。反対意見も注意深く読ませていただきましたが、何にも優先してこれは人権や個人の尊厳の話だと感じました。生きづらい人を多く生んでいる価値観は勇気を持って変えていくべきじゃないか、と。そして誰より僕たち親の世代が子どもたちにそれを伝えていくべきなんじゃないかと。

 日本ではゲイであることで命を狙われるような過激な迫害は少ないかもしれませんし、テレビでも当事者の方が活躍しています。一見受け入れられているように見えても、そこには無意識の偏見が横たわっていることを強く感じます。そういう僕も自分の中に根付いた偏見に気づくこともいまだに多いです。そうしたことを意識的に変えていくことで、誰もが過ごしやすい社会に一歩近づけるんじゃないかと思っています」

(構成/フリーランス記者・中村千晶)

AERA 2023年2月13日号

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