新たな放映権契約の会見で、チェアマンは踏み込んだ発言を口にしている。苦渋の決断であった2ステージ制から、再び来季から従来の1シーズン制へ――。それを示唆するものと受け取れる。だが、「あるべき姿」という理想を追い求めてもいいタイミングとは、いつなのか。そこは慎重な議論が必要かもしれない。
減収に歯止めをかける策として導入した2ステージ制とチャンピオンシップ(CS)のメリットを、おいそれと手放していいものか。昨シーズンのCS決勝は地上波テレビで放送され、第2戦では平均視聴率10%を超えた。これは1年間にJの試合に足を運んだ人の数と、ほぼ同じである。依然、マスにリーチする地上波の影響力は大きい。1シーズン制の「復活」と引き換えに、その利点を失うことに利があるか。そのジャッジはJリーグの分かれ道となりかねない。
放映権料の使い道も十分に議論を尽くす必要がある。使い方を誤れば、10年後の未来から一気に2100億円が消えることになるだろう。市場拡大への有効な投資が未来のJリーグの浮沈を左右する。大金にあぐらをかいて、浪費するわけにはいかない。
チェアマンの手腕、真価が問われるのは、まさしく、これから。持続可能なJリーグを構築するための長期的なビジョンとは何か。それを、いまから考えておかなければならない。チェアマンに期待するのはそこである。金(放映権)の切れ目が、縁の切れ目――。間違っても10年後のJリーグが、そうならないために。