五代の人生をたどる特別展示「没後130年企画―大阪の恩人・五代友厚」が開催されていると聞き、同会議所から徒歩5分の大阪企業家ミュージアムに向かった。このミュージアムは大阪を舞台に活躍した企業家105人を選んで紹介している。常設展示の入り口、最も目立つ位置に五代様のお姿があった。
特別展示は、官職にあった際に受けた辞令や死亡通知、書状などの各種書類、20枚の絵画で生涯を紹介したもの、ゆかりの人との交友について解説したパネル、大阪のゆかりの地を示した地図などさまざまだ。
中でも欧州を旅した際の忘備録『欧行要集』が興味深い。解説によると、「商社(会社)」、「合力(合資)」の単語は、単独の資本ではなく、合資によって運営される事業が望ましいという近代日本が目指すべき方向性を書き留めているとのこと。のちに商都大阪の基礎を築くために活かされたアイデアの種がいっぱいだ。掌に納まるメモ帳に万年筆でびっしりと書かれた文章からは、五代様の若い情熱がしのばれる。
「『あさが来た』が始まって以降、年末までに来場者は通常の2割以上アップしています。増えた分はほぼ女性。効果絶大ですね」(ミュージアムの担当者)
特別展示は2月13日までだが、その後も規模を縮小した展示を検討中とのことだ。常設展示のトップバッターは今後も五代様。「一気に高まった人気を冷ましてなるものか」という大阪人の敬愛ぶりが分かる。
若き日の五代様を知るために、故郷・鹿児島まで足を延ばしてみるのもいいだろう。鹿児島市の泉公園に銅像が立っている。鹿児島中央駅東口広場にある「若き薩摩の群像」では、薩摩藩が英国へ派遣した留学生一行の1人として座像がある。島津斉彬が築いた工場群「集成館」を博物館として活用している「尚古集成館」には、五代が英国で買い付けてきた梳綿機や、綿工業に使った針と、針を研磨するローラーマシンが展示されている。
大阪企業家ミュージアムの担当者によると、銅像はこのほか、大阪市内には光世証券敷地内と、同市立大阪ビジネスフロンティア高校にあるそうだ。あなた好みの五代様を探してみてもいいかもしれない。
(ライター・若林朋子)