消費税引き上げに賛成だったニュースキャスターの辛坊治郎氏。政治家が時代錯誤の公共事業に税金を湯水の如く使う旧態依然の日本の政治に、考えが変わったと語る。

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 私は増税賛成派だ。いや正確には「賛成派だった」と言うべきか。

 現在の税制で得られる税収だけで、増え続ける社会保障費を賄うことが不可能であるのは火を見るよりも明らかだ。それゆえ私は、消費税引き上げに賛成する、という立場だった。

 しかし、ここ1週間ほどの間に永田町や霞が関で起きたことをつぶさに観察していてこう思う。「このままでは消費税30%になっても財政は黒字化しない。やがて本当に、日本はギリシャと同じになるかもしれない」と。

 消費増税法案が衆院を通過した3日後、国土交通大臣は整備新幹線の未着工3区間の建設開始を認めた。これで総事業費3兆円の大公共事業が動き出すことになる。現在国交省は、毎年150億円ほどの税金を使って北海道と北陸の新幹線建設を進めている。

 この3区間の中には、北陸新幹線を金沢から福井県敦賀市に延ばす計画も含まれているが、日本で最もたくさんの原発を抱え、全原発停止後初の再稼働を決めた福井県に対する論功行賞のようにも見える。

 一方で自民党は、今国会に10年間で200兆円の公共事業費をつぎ込む「国土強靭(きょうじん)化基本法案」を提出し、消費税引き上げのもう一人の主人公である公明党も2010年で100兆円規模の公共事業計画をぶち上げている。

 消費税10%にして増える税収は、他の税収が減らないと仮定して、最大13兆円余りでしかない。それなのに、その消費税引き上げが本決まりになった瞬間に、このタガの外れ方は何とも異様だ。

※週刊朝日 2012年7月20日号