福岡のビジネスシーンについて語る松尾龍馬さん
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道路での実証実験も行政側の“理解”が不可欠だが、福岡市はなにかと寛容のようだ
「福岡市の“大きすぎず小さくはない都市としての規模感”がビジネスを進める上で重要」と松尾さんは語る

 人口150万人を突破し、政令指定都市では最大の人口増加率を誇る福岡県福岡市。実は、同市は、若者の起業率が日本一高い都市でもある。2012年の就業構造基本調査によれば、起業者総数における若者(25~34歳)の割合は12.3%と、2位の神奈川県相模原市の8.7%に大きく差をつけて1位。今年、2014年からは国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区(創業特区)」に認定され、市を挙げてスタートアップ(起業)希望者の支援を加速させている。

 なぜ、福岡市でスタートアップする若者が多いのだろうか。今回は福岡市内でベンチャー企業を経営する松尾龍馬さん(32歳)に、福岡の“ビジネス風土”について実体験に基づいて語ってもらった。

 松尾さんが経営する株式会社リーボ(REEVO)は、2011年に福岡市内で起業し、今年で3年目を迎えた企業。スマートフォンアプリの企画・開発や、カーシェアリングシステムの提供など交通系サービスを主軸にしている。

 大手自動車メーカーに4年と4ヶ月勤務した後、2008年のリーマン・ショックを契機に退職。福岡市内で起業をした。その理由については「実は、特に理由があるわけではありません。北九州市出身ですし、大学、会社員時代とずっと福岡市内に住んでいたので」と笑う。

 ちょうどこのころ、自動車の世界でも『所有から共有へ』というカーシェアリングの考え方が登場し、ビジネスを起こすならこっち方面だろうなと直感的に交通系システム会社の起業を決めたという。

「これは完全に結果論ですけど、福岡で起業してよかったと思っています。まず福岡は飛行機・空港・船・地下鉄・バスなど、多様な交通網が発達している。町の規模感もちょうどいい。田舎すぎず都会すぎないので、とにかく実証実験がしやすく、データが取れる。それに市も県も非常に協力的で、ビジネスがやりやすい。弊社が手掛けているような交通系ビジネスは、行政サイドの事業許可が下りないと車を道路で走らせることはできませんから。行政側が、新しい試みを歓迎してくれる姿勢があるのは、とてもありがたかった」(松尾さん)

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