東日本大震災を機に、防災に対する意識が見直されつつあります。震災に備えて用意すべきものと言えば何よりも水ですが、次に挙げられるのが食料です。震災に備えて保存食を用意している人も多いと思いますが、その中でも昔から重宝されているのが缶詰です。
全国あちこちを飛び回っては特産品を食べてまわることから「味覚人飛行物体」という愛称でお馴染みの小泉武夫氏。缶詰愛好家でもある小泉氏は著書『缶詰に愛を込めて』の中で、東日本大震災に見舞われた際に非常食として配給された缶詰について、次のように語っています。
「(配給された缶詰の)ひとつはイワシ缶で、タンパク質補給のためでしょう。それから、かんぱんの缶詰もありました。非常の場合には、やはり缶詰が役立つということを痛感しました。缶詰は時代によって変わっていくものですが、非常用の缶詰というのは、常に意識しておくほうがいいと思います」
災害対策として注目を浴びつつある缶詰ですが、本書ではあまり目に触れることのない珍しい缶詰の紹介も。例えば「アン肝缶」。アン肝にはレチノールという成分が多く含まれているのだそうです。それには、皮膚や粘膜組織を健康に保つ作用があり、子どもの成長や歯茎の健康保持、感染症に対する抵抗力の強化といった効果があるともいわれています。
福島県出身の小泉氏は幼いときからアン肝を食べて育っていたそうですが、福島でさえ冬にしか食べないものであるため、東京ではなおさら手に入りにくいアン肝。しかし、どうしても食べたいと思って探していた時、デパートでアン肝の缶詰を発見。以来、酒の肴にしているとか。
また、手に入ったら、二晩くらいは蒲団の中で抱きしめて寝るぐらい憧れているという「フカヒレ缶」について、
「(フカヒレは)一人三万円とか、四万円とか、思わず腰を抜かして帰ってくるようなお高い店もありますから、注意が肝要です。そんなところに行くならば、フカヒレ缶を買ってきて、自分の家でゆっくり味わうほうが、精神衛生上からもいいと思います」
と話し、実際に味付けしてある姿煮の缶詰を買ってきては、自宅でフカヒレ卵とじ雑炊を作っているそうです。
「非常食=美味しくない」と思われてきましたが、最近では高級缶詰が流行し、缶詰レシピも人気を呼んでいます。日常でも缶詰を常備して、毎日の料理に活用している方も多いのではないでしょうか。
常備している缶詰を少しだけ多めに貯蔵しておけば、ストレスの多い被災時に、いつもの味で乗り切ることも出来ます。「美味しい非常食」のために、缶詰研究をしてみてはいかがですか?