

ジャーナリスト田原総一朗氏は、新型コロナウイルス感染拡大が問題になるかなり前から、政財界の幹部とそれなりの時間、話をした。誰もが日本の将来について危機感を抱いていたというが……。
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新型コロナウイルスの感染拡大が問題になる以前、去年の夏過ぎから、自民党や財界の幹部、そして日本を代表する企業数社の社長たちと、短くない時間、話をしている。
実は彼ら(女性もいる)は、このままでは日本の雇用制度は10年もたない、いや多くの大企業そのものが、10年持続できない、という点で一致しているのである。
つまり、このままでは日本に将来展望はない。少なからぬ国民も、そう捉えているのではないだろうか。
安倍首相と日銀の黒田総裁は、貨幣をどんどん発行すれば需要が拡大すると考えたのだが、需要は拡大せず、財政が悪化しただけであった。国民が将来展望がないと感じているので消費しないのである。
まず、加速する人口減。2019年の出生数は86万4千人であった。米国、イギリス、フランスなどの出生率が1・7以上あるのに、日本は1・4台で推移してきており、人口は年間に約50万人減少している。そして、働く世代の減少に反比例して、日本人の寿命が延びている。35年ごろには、平均寿命が100歳を超えると見られている。となれば、現在の年金制度は破綻し、受給年齢を80歳にしなければならなくなる。80歳まで働かなければならないことになるのだが、定年はどうなるのか。
それについては説明しておかねばならない事実がある。
1989年、時価総額で世界のトップ50社の中に、日本企業は32社入っていた。ところが2018年には、残っているのはトヨタ1社のみで、ほかはすべて落ちてしまったのである。
東大の松尾豊教授は、「現在は、日本の産業は米国の3周遅れになってしまっている」と話している。そして数年後には起こる第4次産業革命では、このままでは日本は間違いなく落ちこぼれる、と述べている。